起立性調節障害では、起立時のめまいや立ちくらみ、また「朝起きるのがつらい」と言った症状が現れます。実はこうした症状は、雨の日や天気の悪い日にさらに悪化する場合があります。その原因は、気圧の変化で自律神経系のバランスが乱れやすくなるためです。
目次
気圧の変化が血圧に影響
人の血圧は、『気圧』によって高くなったり低くなったりと影響を受けています。気圧とは空気による圧力のことです。
高気圧で気圧が高くなればなるほど血管は締め付けられて血圧が上がり、逆に低気圧で低ければ低いほど血管への締め付けが緩むため、血圧が下がります。
▼低気圧のとき症状が悪化しやすい
起立性調節障害でめまいや立ちくらみ、そして朝の起きられないという症状が生じる原因は、交感神経系が十分に興奮しないことにより、『血圧が低下すること』です。そこに、さらに低気圧による血圧の低下が加わると、症状がより悪化する恐れがあるのです。
天気痛
起立性調節障害は比較的新しく認識された病気ですが、気圧の変化がもたらす体調の悪化は起立性調節障害特有のものではありません。
実際、気圧の変化によって体調変化が起こることは昔から知られています。天気が悪いと肩こりや関節の痛みが起こる言葉で、『天気痛』というものがあります。
天気痛は、気圧の変化が耳の中耳にある『気圧センサー』に伝わると、自律神経系が刺激されて関節痛や肩凝り、また、古傷が痛む等といった症状が起こるのではないかと考えられています。
このように、気圧という目に見えないものの影響を受け、人の体調は変化することがあるのです。
注意が必要な急激な天候変化
急激な気圧低下は特に注意が必要です。
スピードが速い台風や、発達した移動性の低気圧は特に気圧が急激に下がり、身体への影響が大きく生じる場合があります。また近年は、毎年のように異常気象が起こり、ゲリラ豪雨という急激な気圧低下を伴う天候の悪化なども起こりますので、こうした天候のときに外で活動する場合には、急な体調悪化に注意が必要です。
気圧の変化で副交感神経系が優位に
気圧の変化は、血圧に直接作用するだけでなく、自律神経系のバランスにも影響をもたらします。
一般的に低気圧が接近して天気が悪くなると、以下のような理由から、普段よりも副交感神経系が優位になりやすくなります。
- 気圧が下がると空気中の酸素濃度が薄くなる→エネルギーを保存するため副交感神経系が優位に→血圧が下がる
- 天気が悪いと空が暗い→暗いと副交感神経系が優位に→血圧が下がる
副交感神経系が優位になるということは、その分交感神経系が抑制されるという事になりますので、その結果血圧は低下しやすくなり、起立性調節障害の症状が悪化しやすくなります。
ヒスタミンの分泌で血圧が下がる
気温や気圧の変化、音や光など、体外環境の変化によって生じる『ストレス』で、ヒスタミンの分泌が増加することが分かっています。
ヒスタミンは、いわゆる花粉症などのアレルギー症状を起こす物質として知られていますが、脳内では神経伝達物質として、血圧降下や血管拡張の作用を持ちます。
低気圧が近づき天気が悪くなると、ヒスタミンの分泌が増えて血圧が下がり、起立性調節障害の症状は悪化しやすくなります。
季節の変わり目は特に注意が必要
起立性調節障害を悪化させるのは、気圧の変化だけではありません。朝晩の急な冷え込みなど、気温の変化によっても自律神経系は乱れやすく、起立性調節障害の悪化を招きます。
気温や湿度、気圧などの急激な天候変化が起こりやすい、春夏秋冬の季節の変わり目は、起立性調節障害の症状が悪化する子どもが多くなる傾向があります。
天候への対策
雨の日や天気の悪い日は、無理をせず家の中で寝ていられれば良いのですが、そうも行かない場合も多々あります。
天気痛の場合の対策例ですが、日本だけでなく海外でも一般的な病気として認識されており、海外では『天気痛予報』というものまであるそうです。これは気温、湿度、気圧などの天候の変化により、事前に天気痛が起こることを予測するものだそうです。
興味深いことに、この天気痛予報を事前に見た人は、天候の変化があっても、天気痛の症状が起こりにくくなったり、痛みが少なくて済むのだといいます。いつ体調が悪化するのか分からずに症状に怯えるよりも、予め発生が分かっていると、脳や身体がそれに備えることができることが症状の緩和につながるのかもしれません。
ただ、残念なことに、日本では天気痛予報はありませんが、天気予報でおおよその情報は掴めますので、天気が悪い日は、起立性調節障害の症状が重くなる、という人は、天候の把握をしてみると少しは気が楽になるかもしれません。
また、天候の悪化により症状が重くなる可能性を見越して、普段よりも慎重に行動する、激しい運動は控える、部活などでも無理をしすぎない、早めに家に帰る、などの予防策を立てておくとよいでしょう。
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