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  • 脳科学が明かす「生産性+40分」の条件。30-50代が陥るプッシュしすぎの落とし穴と解決策

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    「昨日の自分」に勝てない理由を、精神論で片付けていませんか?

    キャリアの責任が重くなり、プライベートでも家庭や介護など多忙を極める30代から50代。この世代にとって、日によるパフォーマンスのムラは切実な悩みです。
    昨日は驚くほど仕事が捗ったのに、今日はメールを一本返すのにも時間がかかる。こうした現象を「気合が足りない」と片付けてしまいがちですが、最新の研究結果は、その裏に明確な「脳の冴え(認知機能の鋭さ)」という科学的根拠があることを示しています。

    研究によれば、精神的に「オン」の状態にある日は、単に気分が良いだけでなく、より高い目標を掲げ、それを実行に移す力が飛躍的に高まります。その差は、1日あたり最大40分もの「追加の生産性」に相当するといいます。
    しかし、ここで抗老化医学(アンチエイジング医学)の視点から注意したいのは、私たちの脳は20代の頃とは異なるということです。無理なプッシュは、かえって長期的な停滞を招くリスクを孕んでいます。

    1. 脳の「鋭さ」がもたらす40分のボーナスタイム

    研究者が発見した興味深い事実は、特定の日に頭が冴えていると感じる時、私たちは無意識のうちに通常よりも難易度の高いタスクを選択し、さらにそれを完遂する粘り強さを発揮するということです。この「認知的なエッジ(知的優位性)」が、1日の生産量を劇的に増やします。

    しかし、30-50代においてはこの「冴え」が不安定になりがちです。その要因の一つが、前頭前皮質(Prefrontal Cortex)の疲労です。
    ここは意思決定や感情制御を司る重要な部位ですが、加齢に伴う微細な炎症や、慢性的なストレスによるコルチゾール(ストレスホルモン)の過剰分泌に非常に脆弱です。これは、いわばスマホのバッテリーが劣化し、高負荷なアプリを動かすとすぐに本体が熱を持ってフリーズしてしまう状態に似ています。「今日は冴えない」と感じる日は、脳が炎症を起こしているか、エネルギー代謝が滞っているサインかもしれないのです。

    2. 睡眠科学が解き明かす「勝負日の作り方」

    生産性の高い日を作るために、抗老化医学の観点から最も重要なのは、睡眠の量よりも「質」、特にノンレム睡眠(深い睡眠)の確保です。
    深い睡眠中には、脳内の老廃物を掃除する「グリンパティック系(Glymphatic System)」が活性化し、翌日の認知機能をリセットします。

    • 成長ホルモンと若返り:30代を過ぎると成長ホルモンの分泌は減少しますが、入眠直後の深い眠りはこのホルモンを分泌させる最大のチャンスです。これは細胞の修復をサポートし、メンタルの安定に寄与する可能性があります。
    • メラトニンの恩恵:強力な抗酸化作用を持つメラトニンは、40代以降急激に減少します。夕食後の照明を暗くし、スマホのブルーライトを避けることで、自前のメラトニン分泌を促すことが、翌朝の「脳の冴え」に直結します。

    3. 「プッシュしすぎ」の落とし穴:逆転の法則

    研究では、高いパフォーマンスを無理に維持しようと自分を追い込みすぎると、効果が逆転することも示唆されています。これは専門的には「アドレナリン疲労(副腎疲労)」の概念に近い状態です。
    常に戦闘モードで交感神経が優位になりすぎると、脳は「過覚醒」状態に陥ります。一見動けているように見えても、判断ミスが増え、創造性は低下します。まるで車のエンジンをレッドゾーンまで回し続けて、焼き付きを起こしてしまうようなものです。特に更年期世代は、自律神経の切り替え(スイッチング)がスムーズにいかなくなるため、意識的な「オフ」の時間が不可欠です。

    4. 私たちが今日からできる「未来への賢い選択」

    30代から50代という時期は、生物学的な変化と社会的責任が交差する、人生で最もダイナミックかつ過酷なフェーズです。日々感じるパフォーマンスの波を「衰え」と嘆く必要はありません。それは、あなたの体が発信している「調整が必要だ」という高度なシグナルなのです。持続可能なハイパフォーマンスのために、以下のステップを意識してみましょう。

    「戦略的休息」をスケジュールに入れる
    40分の生産性向上を享受した翌日は、あえてタスクを8割に抑える「リカバリー・デー」を設定してください。脳の可塑性を維持するためには、あえて活動を抑える揺らぎが必要です。
    血糖値のスパイクを避ける
    午後の脳の霧(ブレイン・フォグ)を防ぐため、高GI食品を避け、タンパク質と良質な脂質(オメガ3脂肪酸など)を中心に摂取することが、認知機能の安定をサポートします。
    セルフモニタリングの活用
    スマートウォッチ等で心拍変動(HRV)をチェックし、自分の自律神経が「回復」できているかを確認する習慣を。数値が低い時は、重要な決断を翌日に回す勇気を持ってください。

    「絶好調な日」の40分を賢く使い、一方で「冴えない日」には脳を労わる。このインテリジェントなバランス感覚こそが、抗老化医学が目指す「持続可能な若々しさ」の正体です。もし、数週間にわたって全く「冴え」が戻らない、あるいは激しい疲労感が続く場合は、単なる怠慢ではなく、ホルモンバランスの著しい乱れが隠れている可能性もあります。その際は、専門医(抗老化医学専門医や内科)への相談も検討してください。あなたのキャリアはマラソンです。まずは今夜の深い眠りから、明日の40分をデザインし始めましょう。

  • Nature誌に学ぶ自己マネジメント:40代からの睡眠改善と細胞レベルのエイジングケア戦略

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    人生の後半戦を支配する『自分自身のメンター』になる方法

    仕事では責任ある立場を任され、プライベートでは育児や介護に奔走する30代から50代。この世代が直面するのは、単なる体力の衰えだけではありません。『寝ても疲れが取れない』『集中力が続かない』といった変化は、私たちの身体という精密なシステムの『OS』が、20代の頃のまま更新されていないことへの警鐘かもしれません。
    2026年4月13日、世界最高峰の科学誌Natureに掲載された記事『14 things our PhD supervisors got right and why it mattered(指導教官が正しかった14のこと)』は、研究者の成長を支えたメンターシップの重要性を解いたものです。しかし、この『良き指導者に導かれる』という概念は、現代人のヘルスケア・マネジメントにおいても極めて重要な示唆を含んでいます。
    私たちは、自分自身の身体を健やかに保つための『専属メンター』にならなければなりません。科学的根拠(エビデンス)に基づき、自分の細胞を正しい方向へと導く。その具体的な戦略を、最新の睡眠科学と抗老化医学の視点から紐解いていきましょう。

    1. 基礎への回帰:睡眠を『受動的』から『能動的』な投資へ

    Natureの記事において、多くの研究者が『基礎を疎かにしないこと』の重要性を挙げています。30代以降のエイジングケアにおいて、その基礎とは間違いなく『睡眠』です。
    加齢に伴い、私たちの体内では眠りを司るメラトニンの分泌量や質が低下し、脳の老廃物を排出する『グリンパティック系』の機能も衰え始めます。これは単なる休息の不足ではなく、細胞レベルでの修復機会の損失を意味します。
    【実践のポイント】
    睡眠をスマホの充電のように『ただ繋げば良いもの』と考えるのではなく、急速充電器を正しくセットするような『能動的な準備』が必要です。例えば、起床直後に日光を浴びて体内時計(概日リズム)をリセットし、15時間後のメラトニン分泌を予約すること。あるいは、就寝90分前に入浴を済ませ、深部体温の落差を利用して深い入眠を誘うこと。こうした戦略的な休息が、翌日のパフォーマンスと10年後の若々しい印象を左右します。

    2. 心理的安全性と自律神経:自分への『静かな思いやり』の効果

    研究において『心理的安全性』が成果を最大化するように、私たちの身体も『リラックス状態』でなければ再生のスイッチが入りません。30-50代は常に『闘争か逃走か』を司る交感神経が優位になりやすく、ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰分泌が、肌のバリア機能低下や内臓脂肪の蓄積を招く要因となります。
    【科学的アプローチ】
    自律神経を整える鍵は、迷走神経の刺激にあります。Nature誌に登場する優れた指導教官のような『静かな思いやり』を、自分自身の心に向けてください。1日5分のマインドフルネスや、深く息を吐き出す『4-7-8呼吸法』は、物理的に迷走神経にスイッチを入れ、炎症を抑えやすい体質づくりをサポートします。自分を厳しく律するだけでなく、適切に緩めることこそが、バイオ・レジリエンス(生物学的回復力)を高める秘訣です。

    3. 持続可能な代謝マネジメント:40代からの『マイオカイン』戦略

    40代を過ぎると、ホルモンバランスの変化に伴い、筋肉量の維持が難しくなる『サルコペニア』のリスクが高まります。しかし、最新の研究では、筋肉は単なる運動器官ではなく、抗炎症作用を持つ『マイオカイン』を分泌する重要な器官であることが分かっています。
    【未来への投資】
    短期間の過激なダイエットではなく、10年後を見据えた『代謝マネジメント』を導入しましょう。1食あたり20g以上の良質なタンパク質摂取と、週2回の適切なレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせることは、成長ホルモンの分泌を促し、脂質代謝の活性化を助けます。サプリメントを活用する際も、NMNやコエンザイムQ10など、信頼できる研究データが存在する成分を、製造元を厳選した上で補助的に取り入れるのが賢明です。

    私たちが今日からできること

    Nature誌に寄せられた学生たちの声は、優れたリーダーとは『答えを教える人』ではなく『正しい道筋を共に歩む人』であることを示しています。あなたの人生において、その役割を担えるのはあなた自身しかいません。
    年齢を重ねることは、決して下り坂を下ることではありません。自分の体質をより深く理解し、最新の科学を味方につけて、自分という個体を洗練させていくプロセスです。今日、この瞬間から、あなた自身の良きメンターとして、新しいヘルスケアの習慣を書き始めてください。その積み重ねが、5年後のあなたの肌の輝き、朝の目覚めの軽やかさ、そして何より『自分らしく生きている』という確かな自信に繋がるはずです。

    免責事項:本記事に含まれる健康情報は一般的なガイドラインであり、個別の医学的診断や治療に代わるものではありません。新しい健康習慣やサプリメントを取り入れる際は、必ず医師や専門家にご相談ください。過度な執筆や実践はストレスの原因となる場合がありますので、適度なゆとりを持って取り組んでください。

  • 【最新研究】30代から知るべき転倒の真実:脳の「過剰な頑張り」が美容と健康を損なう理由

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    「最近つまずきやすくなった」のは筋力不足のせいではない?

    30代を過ぎ、40代、50代と年齢を重ねるにつれ、ふとした瞬間に足元がおぼつかなくなることはありませんか。階段でのヒヤリとした経験や、何もない平らな道でのつまずき。多くの方はこれを「運動不足による筋力の低下」や「反射神経の衰え」と片付け、ジムに通ったり激しいトレーニングで対策しようとします。しかし、米国で発表された最新の研究(Why your brain may be sabotaging your balance as you age)によると、加齢に伴うバランス能力の低下の正体は、私たちが想像していたものとは正反対である可能性が浮上しました。実は、脳が「働かなさすぎること」ではなく、むしろ「過剰に働きすぎること」が、私たちのバランスを妨害しているというのです。

    驚きの新常識:脳が「頑張りすぎる」からバランスを崩す

    研究グループは、加齢やパーキンソン病に伴うバランスの問題が、身体の活動不足ではなく、脳と筋肉が些細な乱れに対しても「過剰に反応(Overactive)」してしまうことに起因することを発見しました。体がバランスを崩しそうになった時、脳は本来なら最小限の動きで修正すべきところを、全身の筋肉をガチガチに固めるよう強い命令を出してしまいます。これを筋肉の「共収縮」と呼びます。反対方向の筋肉同士が同時に引っ張り合うことで体が硬直してしまい、結果としてしなやかな立て直しができなくなるのです。この予期せぬパターンを解析することで、将来的に誰が転倒しやすいかを予測できる可能性も示されています。

    美容を蝕む「過剰な力み」の罠

    この「過剰な力み」は、単なる歩行の問題に留まらず、30-50代が最も気になる美容面にも深刻な影響を及ぼします。脳がバランスを守ろうと常に筋肉を緊張させている状態は、慢性的な「巻き肩」や「反り腰」、「首の凝り」を定着させます。筋肉が常にオンの状態で固まると、血行が滞り、デコルテのラインが崩れたり、顔のたるみが加速したりする原因にもなり得ます。しなやかな身のこなしこそが若々しさの象徴ですが、脳の過剰な働きがその美しさを奪ってしまうのです。

    睡眠の質と自律神経への影響

    さらに、脳が常にバランスに対して過剰警戒モードに入っていると、交感神経が優位な状態が続きます。これは夜間の睡眠にも直結します。寝ている間も脳が身体の緊張を解くことができず、朝起きた時に「体が重い」「しっかり休めた気がしない」と感じる一因となります。バランス能力の維持には、筋トレよりも先に「脳の警戒を解き、リラックスさせること」が重要であるというパラダイムシフトが起きています。

    ヘルステックが変える未来のエイジングケア

    この記事の知見は、今後のヘルスケア・テクノロジー(ヘルステック)のトレンドを大きく塗り替えるでしょう。これまでは「歩行速度」や「握力」といった物理的な数値が健康指標でしたが、今後は「筋肉の無駄な力み」や「脳の電気信号パターン」をウェアラブル端末で解析する時代がやってきます。

    筋緊張スコアの可視化
    Apple Watchなどのデバイスで、将来的に「筋肉の微細な硬直度」をAIが解析し、転倒リスクを未然に察知する機能が期待されます。
    ブレイン・トレーニングの普及
    脳を深部からリラックスさせるバイオフィードバック技術が、睡眠改善や姿勢矯正のプログラムに組み込まれるようになるでしょう。

    30代から始めたい「脳を休める」新習慣

    「老化に抗うために鍛える」という考え方から、「脳の無駄な働きを抑えてスマートに年齢を重ねる(スマートエイジング)」という考え方へ。私たちが今すぐ取り組める具体的な対策を提案します。

    • 「脱力」を意識したボディワーク:ヨガやピラティス、フェルデンクライス・メソッドのように、脳が自分の体の位置を正しく認識し、最小限の力で動くための練習を取り入れましょう。
    • マグネシウム入浴で物理的に緩める:脳の命令で固まった筋肉を、エプソムソルト(マグネシウム)入浴などで外側からリラックスさせ、脳に「安全であること」をフィードバックします。
    • 睡眠環境のデジタルデトックス:脳の過剰活動を鎮めるため、就寝前のブルーライトを排除し、深いノンレム睡眠を確保することで、翌日の姿勢と歩行の安定感を整えます。

    まとめ:しなやかな未来のために

    「頑張りすぎ」が老化を加速させるという最新科学の知見は、忙しい現代を生きる30-50代への重要な警告です。仕事や家事に追われ、常に脳をフル回転させている私たちは、知らず知らずのうちに体にも過剰な緊張を強いています。これからは「もっと鍛える」のではなく「もっと緩める」こと。脳の無駄な警戒を解き、本来のしなやかさを取り戻すことが、100年時代を美しく、健康に歩み続けるための鍵となるでしょう。

  • 朝起きられず寝坊を繰り返してしまう理由

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    受験やテスト、大事な会議や商談、飛行機の時間に寝坊して遅れた経験はありませんか?寝坊は、時には大きな失敗や取り返しの付かない事態、人から信頼を失うことに繋がることだってあります。周囲からは後ろ指を刺され、落伍者のレッテルを貼られて、罪悪感や絶望感に苛まれても、気がついたらまた寝坊している。本気で朝寝坊を治したい人のための情報を紹介します。

    朝寝坊の原因

    あなたの周りには、朝寝坊とは無縁な『寝起きが良く、朝に強い人』がいませんか?しかも、自分と同じように忙しくしていたり、睡眠時間が少ないのにも関わらず、です。

    朝が弱くて朝寝坊を繰り返す人と、朝に強くて寝起きもすぐ行動出来る人の違いはなんでしょうか。その決定的な違いは、体質によって左右されるものでもあります。朝寝坊を繰り返してしまう原因を幾つかご紹介します。

    睡眠の質が悪い

    「毎日睡眠時間が3時間だけ」。
    これなら朝寝坊の原因もはっきりわかります。明らかに睡眠不足です。

    しかし、毎日たっぷり眠っているはずなのに、朝が辛いというのは、睡眠の質に問題がある可能性があります。ちなみに健康によいとされる睡眠時間は、およそ7時間~9時間程度といわれます。7~9時間程度は眠っているにも関わらず、朝起きられない場合は、睡眠の質が悪い可能性がありますので、睡眠の質を改善することから始めましょう。

    ちなみに、『朝が強い人』は睡眠の質が良い人である場合が多いです。

    睡眠サイクルの問題

    睡眠サイクルの問題で朝起きられない場合もあります。人の睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠、いわゆる浅い眠りと深い眠りが、『交互に繰り返す』という特徴があり、これを『睡眠サイクル』と言います。浅い睡眠の時は比較的起きるのが容易で、深い睡眠の時に起きようとすると起きるのが辛い、というわけです。

    睡眠サイクルは人によってある程度固定されていますから、毎日ある程度同じ時間に寝起きしている場合、起きる時間が深い睡眠のノンレム睡眠中であるために、起きれずに寝坊してしまう、という可能性があります。

    この場合は、睡眠サイクルの特徴を利用して、起きる時間か眠る時間を前後にずらしてみると良いでしょう。効果のある時間は人によって異なるため、試行錯誤が必要になるかもしれませんが、人によっては数十分ずらしただけでも、寝起きの楽さに劇的に変化が出ることもあります。

    体内時計と自律神経系に問題がある

    人には体内時計という目に見えない生体時計が備わっています。

    本来、体内時計が正常に働いていれば、朝は自然と同じ時間になると目が覚めて、夜も大体同じ時間になると眠たくなって眠ることができ、生活習慣が固定化出来るのですが、朝寝坊を繰り返す人の多くは、この体内時計が狂ってしまっているのです。

    体内時計が狂ってしまう原因には、生活習慣の乱れやストレス、食生活、ホルモンバランスの乱れなど、様々な事柄があります。

    朝寝坊に潜んだ自律神経系の乱れ

    朝寝坊をしてしまう人には、朝寝坊だけでなく生活する上で抱えている問題がいくつかあります。
    例を挙げると、

    • 午前中は頭がボーっとして使い物にならず、気持ちも乗らない
    • 午後から段々と頭がはっきりしてくる
    • 夜になると絶好調で、夜更かしは得意
    • 寝付きが悪く次の日が憂鬱
    • 休日は寝溜めして、昼近くまで眠る
    • 体調管理が苦手で、よく風邪をひく
    • 歳を追う毎に体重が増えて太りぎみ
    • 飽きっぽく、集中力がない

    実は、こうした体の不調や変化には、ある共通した原因が隠されています。それは、『自律神経の乱れ』です。

    自律神経系は本来、日中に活発に活動すべき時間帯には交感神経系が、夜間の休息すべき時間帯には副交感神経系がそれぞれ優位に働いています。ところが、自律神経系が乱れると、日中に交感神経系が十分に働かないため、脳の覚醒が中途半端で、眠気を感じたり、ぼーっとして集中力が続かない、と言った症状が現れます。

    また、夜になっても副交感神経系が働かないため、体が休息の準備をすることが出来ず、中々眠りにつくことが出来ず、寝付きは悪く、眠りも浅くなってしまうのです。

    朝寝坊を繰り返してしまう本当の原因は、単に睡眠が足りていないだけでなく、実は自律神経系の乱れや、自律神経系が乱れることで起こる自律神経失調症が根底にある可能性があるのです。

    自律神経系の乱れは、生活習慣の乱れ、ストレス、食生活の乱れ、ダイエット、睡眠不足などによって、誰にでも起こる可能性がありますから、多忙な人は特に注意が必要です。

    photo credit: Dclicks & Dclacks Dreaming in 3D now ! (license)

  • 快眠と運動

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    人の体は自律神経系という、無意識のうちに働く神経系によって脳が覚醒したり眠りに付いたりしています。適切な方法で運動をすると、自律神経系の働きを良くすることが出来、寝付きを良くしたり眠りを深くするなど、快眠効果を得ることが出来ます。

    快眠に重要な自律神経系

    快眠と運動の関係を紹介する前に、自律神経系という神経の特徴を知る必要があります。

    自律神経系は、呼吸をしたり心臓を動かしたり、瞬きをしたりなど、人が普段、無意識のうちにしている様々な運動を統括している神経です。

    自律神経系は交感神経系副交感神経系という二つの神経系で構成されており、二つの神経系の役割を大まかに示すと、

    • 交感神経系:脳の覚醒、心身の興奮
    • 副交感神経:脳の休息、心身のリラックス

    表裏一体
    二つの神経系は覚醒と休息、興奮とリラックスのようにそれぞれ相反する特性を持ちます。この二つの神経系は相反する特性を持つと同時に、働く時間もコインの裏と表のように表裏一体の関係を持ち、一方が働いているときは片方が休み、もう一方が働いているときはもう一方が休んでいます。

    昼と夜
    交感神経系と副交感神経系が働く時間は、それぞれ決まっています。日中は脳を覚醒させる交感神経系がよく働き、夜間は脳を休息させる副交感神経系がよく働きます。

    一方が働いている時、もう一方は完全に休んでいるわけではありませんが、活動レベルは下がります。例えば、日中交感神経系が働いているときは、副交感神経系は緩やかに働いており、逆に夜間は副交感神経が優位になって、交感神経系は鎮静します。

    自律神経系と運動

    さて、ここからは本題の快眠と運動の関係についてです。

    運動とは、走ったり飛んだり跳ねたり、とにかく体を動かすことを言います。体を動かすと、その分、体は激しく酸素やエネルギーを消費するため、それを補うために血圧が上昇して、呼吸や心拍数は速くなります。この血圧や心拍数を自動的に調節しているのが自律神経系です。

    運動をすると自律神経系のうち、交感神経系が興奮して、血圧上昇、心拍数増加などの作用をもたらします。

    交感神経系への刺激が、何故快眠に結びつくかというと、例えば100mを全力疾走した後のことを思い浮かべてみて下さい。

    全力疾走をすると、息は激しく切れて、その後しばらくは動けないほど疲れます。100mを走っている最中に働いているのは交感神経系ですが、走り終わった後、息を整えたり体の疲れを癒やすために働くのは副交感神経系です。

    交感神経系が激しく働いて、脳や体が疲労すると、その後には副交感神経系が自動的に働き、体を休めようとするのです。交感神経系と副交感神経系の働きは、波のように繰り返し、片方が穏やかなときはもう片方も穏やかに、片方が激しく働けば、その後もう片方も激しく働きます。

    自律神経系の表裏一体の関係から、日中、適度に体を動かして交感神経系を刺激しておくと、夜になると副交感神経系が働きやすくなるため、寝付きが良くなったり、より深く眠ることができるようになります。

    運動の快眠効果

    適度な運動は、交感神経系への刺激だけでなく、快眠するために重要ないくつかの効果をもたらします。

    自律神経系のメリハリを作る
    交感神経系と副交感神経系は表裏一体。交感神経系が刺激されるとその分副交感神経系の働きも強くなり、二つの神経系が刺激されることで、自律神経系の働きにもメリハリが生まれて、自律神経系そのもののバランスが整いやすくなります。

    自律神経系がしっかり働いていると、夜になり眠るべき時間が来ると自然と副交感神経系が優位に働くようになり、ぐっすりと快眠できるようになります。

    ストレスの解消になる
    適度な運動による心地良い刺激は脳にたまったストレスの解消に効果的です。ストレスは快眠を阻害する大きな要因でもあるため、ストレスを解消することは、快眠するためにも非常に効果的です。

    このように、人の体に自然に備わっている自律神経系の仕組みをうまく利用して、適度に運動することが、夜の快眠へとつながるのです。

    快眠におすすめの運動

    快眠のための運動としておすすめなのは、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリング、登山など、いわゆる有酸素運動です。また、あまり激しい運動ではなく、適度に疲労を感じる程度の運動が最適です。

    有酸素運動がおすすめな理由は、誰でも無理なくできる運動であることと、ウォーキングやサイクリングのように、手足を規則的に動かす運動は、脳内のセロトニン神経を活性化させることにも繋がるためです。

    セロトニン神経は交感神経系と同調した働きをして、脳の覚醒を保つ神経系です。また、セロトニン神経から分泌される神経伝達物質セロトニンは、夜になると睡眠ホルモンであるメラトニンへと変化するため、規則的な有酸素運動(リズム運動)をすることは、交感神経系を刺激し、セロトニン神経を活性化、そしてメラトニンの分泌促進の効果が得られる、とても効率的な運動なのです。

    快眠を阻害する運動のしかた

    おおよその運動が交感神経系を刺激するため、この運動はしないほうが良いという運動はあまりありませんが、快眠という観点で考えると、睡眠前の運動は控えるべきです。

    睡眠直前に運動をすると、本来副交感神経系働くべき時間なのに交感神経系が働いてしまい、脳が興奮して寝付きが悪くなってしまうことがあります。また、交感神経系と副交感神経系の働くべき時間はそれぞれ、交感神経系は日中、副交感神経系は夜、と決まっているため、この順序を乱すと、自律神経系の働きそのものがバランスを崩すきっかけにもなってしまいます。

    快眠を得るためには、睡眠前の運動は控え、例えば夜仕事から帰ってきて、お風呂に入る前に走って汗を流すなどする場合は、ベッドに入る時間から逆算して、3時間~4時間前までには運動を終わらせるようにしましょう。

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  • 小学生に必要な睡眠時間

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    育ち盛りの小学生にとって、睡眠は重要なものだということは多くの人が何となく理解しているところですが、具体的な睡眠の役割や、小学生にとって適切な睡眠時間がどれくらいなのかは、あまり詳しくは知られていません。小学生の睡眠時間についてご紹介します。

    子どもにとっての睡眠

    子どもと大人の睡眠を比べると、決定的な違いが一つあります。それは『体の成長』があるかないかです。子どもは日々の睡眠中に体が成長して大きくなっていきますが、大人になると体の成長は止まります。

    人の体は、生まれたときから大人になるまで、日々成長を続けますが、体の成長が最も活発に起こるのが睡眠中です。睡眠中に体の成長が活発化する理由は、睡眠中に『成長ホルモン』の分泌が最も活発になるからです。

    実は、大人になっても成長ホルモンは分泌され続けますが、体を成長させるほどの量の成長ホルモンが分泌されることはなく、大人にとっての成長ホルモンの役割は、傷ついた体の細胞や組織などをメンテナンスすることが主となります。

    こうして、小学生も含め、育ち盛りの子どもにとっての睡眠とは、体が成長するために欠かせないものですが、子どもの睡眠時間が短くなると、成長に影響が生じることが懸念されます。

    睡眠時間が減ると

    子どもの睡眠時間が減ることで起こりやすいのが、『体の成長の遅れ』と『二次性徴の訪れの早まり』です。

    体の成長の遅れは以下のようにして起こります。
    1.睡眠時間が減ると、睡眠ホルモン『メラトニン』の分泌が減少する。
    2.メラトニンの分泌が減ると、成長ホルモンの分泌が減少する。
    3.成長ホルモンの分泌が減ると、身長や筋肉などの成長が遅れる。

    体の成長が遅れても、成長が続ければ極端な低身長になるようなことはありません。しかし、子どもの睡眠時間の減少のもう一つの影響として、『二次性徴の訪れが早くなりやすい』という特徴を持ちます。

    子どもの成長に合わせて大量に分泌されるメラトニンには、『性腺抑制作用』があります。性腺抑制作用とは、性腺刺激ホルモンによって『性腺』が発達するのを抑制する働きのことです。

    性腺とは生物の生殖能力を司る生殖器のことです。性腺刺激ホルモンの分泌が増加すると、男性の場合は男性ホルモン、女性の場合は女性ホルモンの分泌が活発になり、性腺が発達していき、やがて『二次性徴』、いわゆる肉体が成人機能を有する状態を迎えます。二次性徴を迎えると、身長の成長も活発になりますが、反面、二次性徴後の身長の伸びは緩やかになり、成長が徐々に止まります。

    つまり、たっぷり睡眠をとって、メラトニンの分泌量が多ければ、その分二次性徴の訪れが抑制されて、体の成長を長期間続けることができるため、その分、身長が伸びやすいということが言えるのです。

    睡眠時間が減ってメラトニンの分泌や成長ホルモンの分泌量が減ると、体の成長は遅れやすくなります。さらに、メラトニンの分泌量の減少が、性腺刺激ホルモンの分泌量の増加につながり、二次性徴が早く訪れやすくなる、つまり体の成長のピークが、睡眠時間の減少によって早く訪れやすくなってしまうのです。

    つまるところ、『子どもの睡眠時間が減ると成長が早く止まりやすくなる』、『身長をたくさん伸ばすには、睡眠をたっぷり取って二次性徴の訪れを遅らせることが重要』ということが言えます。

    小学生の身長の成長データ

    男女年齢別の平均身長(2014年)と、身長の年間成長量(2016年)を表した表です。

    男子 女子
    平均身長 年間成長量 平均身長 年間成長量
    7歳 122.0cm 5.8cm 119.3cm 5.7cm
    8歳 126.3cm 5.4cm 125.7cm 6.2cm
    9歳 134.6cm 5.2cm 133.7cm 6.7cm
    10歳 139.2cm 6.1cm 139.3cm 6.5cm
    11歳 145.1cm 7.3cm 146.8cm 5.1cm
    12歳 152.6cm 7.2cm 150.8cm 3.1cm
    13歳 158.1cm 5.5cm 155.2cm 1.5cm
    14歳 164.1cm 3.3cm 156.4cm 0.5cm
    15歳 165.6cm 1.5cm 155.8cm 0.6cm
    16歳 169.4cm 0.9cm 158.7cm 0.2cm

    ※平均身長と成長量は別々の統計データから抽出しているため、数値は一致しません。

    表を見ると、男子は11歳と12歳に、女子は9歳~10歳にそれぞれ年間成長量がピークに達しているのがわかります。個人差もありますが、体を成長させるには、この間に良質な睡眠を取ることが、特に重要であるということが言えます。


    データの引用:文部科学省 – 「学校保健統計調査-平成28年度(確定値)の結果の概要」,厚生労働省 – 「第2編 保健衛生 第1章(第2-6表 身長・体重の平均値,性・年次×年齢別)」

    二次性徴の時期

    二次性徴が訪れる時期は、男女によって若干異なります。個人差がありますが、一般的には女子のほうが男子よりも二次性徴が早く、男の子は12歳前後から14歳頃、女の子は10歳前後から14歳頃に起こることが多いです。

    男女いずれも、小学校中学年から高学年にかけて二次性徴を迎えることが多く、この時期に適切な睡眠時間を確保することがいかに重要かが分かります。

    二次性徴が起こること自体は、極自然なことで、子どもが順調に成長している証拠でもあります。しかし、睡眠時間の減少によって二次性徴の起こりが早すぎる場合、肉体は性的に成熟し、その後の体の発達が少なくなってしまうのです。

    ※もちろん、『体の成長』にとって重要なのは睡眠だけでなく、食べ物や運動など他の要素もあります。

    学力の低下も懸念される

    小学生の睡眠時間が減ることで、懸念されるのは、身長の伸びや体の発育など、成長の遅れだけではありません。

    睡眠不足は、集中力や判断力の低下に繋がります。また、睡眠中は記憶の整理や取捨選択をする時間でもあり、学校で勉強したことを記憶として定着させるためには、十分な睡眠が必要不可欠です。

    根本的に忘れてはならないのが、睡眠による体の成長とは、『脳の成長』も含まれているという点です。子どもは大人に比べて脳機能も発展途上であり、脳の発達には睡眠が重要な要素となっているのです。

    こうして、脳機能も発展途上の小学生の睡眠時間が減ると、学力低下に繋がることが懸念されるのです。

    小学生に必要な睡眠時間

    アメリカの睡眠財団によると、同財団が推奨する小学生(6歳~11歳)の睡眠時間は『9~11時間』とされます。また、『最低限の睡眠時間』とされるのが、『7~8時間』です。

    小学生の最低限の睡眠時間は7~8時間』となっていますが、子どもの睡眠は、脳や体の成長に直結していることを考えると、よほどの事情がない限りは、推奨される9~11時間の睡眠時間を確保して、健やかな成長を促してあげたいところです。

    参考:睡眠財団 – 『HOW MUCH SLEEP DO WE REALLY NEED?

    睡眠不足で子どもに不調が生じることも

    子どもは十分に発達するための睡眠時間が確保出来ないと、脳は睡眠不足によってストレスを抱えることになります。

    ストレスは成長にも悪影響を与えることはもちろん、自律神経系が未発達な子どもの場合は、自律神経系を乱す原因ともなり、めまいや立ちくらみ、低血圧、貧血、吐き気、朝起きられない、などの症状を特徴とする、自律神経失調症の一種である、『起立性調節障害』の発症に繋がる可能性もあります。

    子どもの睡眠不足の悪影響

    子供の睡眠不足は成長ホルモンの分泌量が減ることで、以下のような影響が生じる恐れがあります。

    • 肥満傾向
    • 知能の発達が遅れる
    • 運動神経の発達が遅れる
    • 体の成長が遅れる
    • 情緒が不安定になりやすい

    詳しくは『睡眠不足の子供に起こる悪影響』をご覧ください。

    勉強よりも睡眠を優先すべき

    学歴社会の日本では、子どもが小学生の頃から塾や習い事に通わせる熱心な親御さんも少なくありません。子どもの将来を思えばこその行動ですが、ときにこうした習い事などが子どもの睡眠時間を奪ってしまっていることがあります。

    勉強や習い事は大人になってからでも遅くはありませんが、脳や体が成長できるのは、子どものうちだけです。

    もしも我が子が、ご紹介した小学生に必要な睡眠時間を下回るような生活をしているのであれば、今すぐに生活習慣を見直し、出来るだけ多くの睡眠時間を確保できるようにしてあげましょう。

    また、十分な睡眠を取ることは、勉強する上での集中力や学習効率を高める、ということも忘れてはなりません。睡眠が不足していれば、いくら塾に通わせても、勉強したことはあまり身にならないかもしれません。

    また、睡眠が重要であるということは、小学生の子どもだけでなく、中学校や高校に上がってからも、さらに大人にとっても変わらないことです。

    自分や子どもの年齢に合わせて、中学生に必要な睡眠時間と、高校生に必要な睡眠時間社会人にとって理想の睡眠時間もチェックしましょう。

    photo credit: Nicolas Alejandro Street Photography (license)

  • 緊張やあがり症とセロトニンの関係

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    セロトニンには緊張やあがり症などの症状を抑える作用があります。人前での発表や面接の前などに緊張してしまい、イライラしたり強い不安を感じるのは、直接的には『ノルアドレナリン』の分泌が増えるためですが、セロトニンが不足していると、ノルアドレナリンの作用が強くなり、イライラや不安がより強く感じやすくなります。

    あがり症とは

    脳が不安や緊張を感じたときに起こる『あがり』は、『ストレス』を感じたとき交感神経系が興奮し、脳内で神経伝達物質のノルアドレナリンの分泌が増加することで起こります。

    ノルアドレナリンは何らかのストレスに反応して分泌が増加し、交感神経系を刺激して脈拍を速めたり、血圧を上昇させるなど、ストレスへ心身が対抗できるように働きます。

    緊張したときの反応
    心拍数増加/血圧上昇/体温上昇/体が強張る/声が震える/どもる/手足が震える/赤面/発汗/口が渇く/頭が真っ白になる/めまいや立ちくらみ/食欲低下/吐き気/不安/恐怖/イライラ/興奮
    ※反応には個人差があります

    ノルアドレナリンは、ストレスに対する恐怖や不安と言った精神的な反応を生み出します。恐怖や不安などの精神作用が人よりも極端に強く現れてしまうことが、『あがり症』の原因の一つであると考えられます。あがり症は、対人恐怖症社交不安障害など、症状により様々な病名で呼ばれることがあります。

    しかし、本来は緊張や「あがり」そのものは決して悪ではありません。

    そもそも、不安イライラなどと言ったストレスへの反応とは、生物が生きていくための生存本能によって起こるもので、例えばサバンナで生きる野生動物が「ストレス=生命の脅威」に対して、戦うか逃げるかを瞬時に判断することは、その生物が生き残る上で最も基本的で、最も重要なことです。

    ストレスに遭遇したとき、緊張したり不安を感じたりするのは、脳が正常に働いている証拠であり、これ自体は全くおかしなことではないのです。

    ところが、人間の場合、とりわけ日本人の場合は、野生動物とは違って、生命が危険に晒されるという状況は滅多に無いわけで、普通の社会生活を送るうえで、いわゆる『あがり症』と言われるほど過度の「あがり」は、あまり好ましくない反応であります。

    ストレスへの過剰反応とも言えるあがり症を克服する上で重要なのが、脳内でのノルアドレナリンやセロトニンの働きです。

    あがり症の原因

    あがり症で不安や恐怖と言った感情を過度に増幅してしまう原因は、人によって千差万別です。

    過去の失敗や、恐怖体験に基づくもの、失敗したときの影響を想像して起こるあがり、慣れないことや初めてすること、未知の体験に対する恐怖など、様々な心理的なストレスが交感神経系の興奮を呼びます。

    こうしたあがり症を克服することは容易ではなく、治療法も山ほどありますが、万人が確実に治るような方法はありません。

    先にも書いた通り、「あがり」が起こること自体は、脳の正常な働きによるものですので、その性質を理解して、不安や恐怖を無理に打ち消したりするのではなく、どのように向き合っていくかを考えるほうが得策であるように思います。

    セロトニンはあがりを緩和する

    脳内で働く神経伝達物質であるセロトニンには、ストレスや緊張から来るあがりの症状を緩和する働きが期待できます。

    セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンと言った神経伝達物質は相互に影響を及ぼし合う性質を持ちます。なかでもセロトニンは、ノルアドレナリンやドーパミンが過剰な働きをしないように、バランスを保つ働きをする物質で、精神の安定や心のバランスを整える作用を持ちます。

    あがりの緩和
    セロトニンは、ストレス時にノルアドレナリンがもたらす、不安、恐怖、イライラ、怒りなどのいわゆるネガティブな精神作用を抑制し、昂ぶった精神を沈静化させる心身をリラックスさせる働きがあります。

    セロトニンが正常に働くことで、ノルアドレナリンが暴走したときに起こる過度の緊張やあがり症のような、様々な弊害を、改善したり予防することが期待できるのです。

    あがり症の人はセロトニンが不足している可能性がある

    不安や恐怖と言った感情を緩和する働きをするセロトニン。しかし、セロトニンが不足していると、不安や恐怖などのマイナスな感情が強く現れやすくなることが分かっています。

    つまり、日頃から緊張を感じやすかったり、極度のあがり症の人は、脳内のセロトニン神経が弱っていたり、脳内のセロトニンが不足している可能性があるのです。

    セロトニンが不足する最も大きな原因はストレスです。学校や家庭、職場などで日頃から何らかのストレスを抱えていると、慢性的なセロトニン不足に陥り、あがり症の症状も悪化しやすくなる可能性があります。

    まずはストレスの解消から始めてみる
    何らかのストレスが原因で、緊張しやすかったりあがりを起こしやすいのであれば、あがり症を克服するアプローチの一つとして、あがり症の症状だけにスポットライトを当てるのではなく、日常生活に潜むストレスを特定し、そのストレスを解消することでセロトニン不足を解消することであがり症の症状を改善していく、というやり方も考えられます。

    心頭滅却すれば
    「心頭滅却すれば火もまた涼し」と言う仏教の言葉があります。辛いことや苦しいことも、心の持ち方や考え方次第で克服できるという考え方です。セロトニンはまさにこの、心頭を滅却させて火を涼しいとさえ感じさせてくれる物質です。

    極論を言えば、禅僧のように日頃からの修行でセロトニン神経を鍛えておけば、緊張やあがり症は克服できるのかもしれません。もちろん、一般の人にはそうした修行は難しいですから、生活の中でセロトニン神経を鍛える工夫が必要になります。

    セロトニン神経を鍛えるには『セロトニンを増やす方法』をご覧ください。

    セロトニン不足は精神疾患につながる場合も

    セロトニンの不足は、あがり症の症状が現れやすいだけでなく、うつ病や不眠症のような様々な精神疾患の原因としても挙げられます。

    生活の中で、強い緊張やあがりを経験することが多い人は、そうした一つ一つの体験そのものが強いストレスとなってセロトニン神経を疲弊させてしまうことが考えられますので、気分の落ち込みや寝付きが悪くなるなどの何らかの精神的な不調や、微熱、頭痛、肩こりなど身体的な変調を感じた場合は、早めに専門医に相談して頂ければと思います。

    セロトニンが不足したときの症状は『セロトニン不足の原因と症状』をご覧ください。

    photo credit: Lynn Friedman Thea Selby Heartfelt Acceptance Speech (license)

  • セロトニンと頭痛の関係

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    頭痛が起こる原因の一つとして、体内のセロトニンの働きが関係している可能性があります。セロトニンは脳内で働く神経伝達物質で、自律神経系との関係が深い物質です。また、痛みを抑制する働き、血管の収縮作用など、頭痛の発生に関係がある作用をいくつか持ち合わせています。

    セロトニンと頭痛

    頭痛の発生とセロトニンの関係を、大きく3つに分けて紹介します。

    • 脳内のセロトニンによって起こる頭痛
    • セロトニン不足によって起こる頭痛
    • 血液中のセロトニンによって起こる頭痛

    脳内のセロトニンによって起こる頭痛

    脳内にある視床下部には、人体の様々な中枢が集まっています。その中にセロトニンを合成するセロトニン神経があります。

    セロトニン神経と、セロトニン神経から合成されるセロトニンは、呼吸や脈拍などをコントロールする自律神経系と密接な関わりを持ち、心身の活動やストレスなどに反応して、脈拍、血圧、呼吸、などを調節するために分泌される抗ストレス作用を持つ物質でもあります。

    血圧上昇で頭痛が起こる場合がある
    セロトニンはストレスに反応する物質であるため、心身にストレスが掛かると、働きが活発になります。

    セロトニンは自律神経系のうち、交感神経系の働きと同調して働きます。ストレスによって交感神経系が興奮すると、セロトニンの働きは活性化し、血管の周囲の筋肉をを収縮させて血圧を高め、血流は制限されます。このとき、人によっては脳の血圧が高まることで頭痛を起こす場合があります。

    血圧低下で頭痛が起こる場合がある
    ストレスを感じる状況が過ぎると、交感神経系の興奮は収まって、副交感神経系が働き、セロトニンによる血管の収縮も緩和されて、血圧が低下、血流が改善します。血圧が上昇した状態から急激に低下したときに頭痛を感じる人もいます。

    これらの頭痛は、セロトニンやセロトニン神経が、自律神経系の働きに反応して血圧の上昇や低下に作用した結果として起こるタイプの頭痛といえます。

    セロトニン不足によって起こる頭痛

    慢性的なストレスでセロトニン神経の働きが悪くなり、セロトニンが不足することがあります。セロトニン神経の働きが悪くなると、自律神経系の働きにも乱れが生じやすく、いわゆる『自律神経失調症』の諸症状を起こす場合があります。

    自律神経失調症の症状は多岐に渡りますが、その症状の一つに頭痛があります。慢性ストレスを抱えて自律神経の働きが乱れると、交感神経系が過度に興奮した状態が続き、血圧が高い状態が続き、血流が悪化することなどが頭痛を起こす原因となると考えられます。

    これはセロトニンそのものが頭痛を起こす、ということではなく、セロトニンが不足することで頭痛を起こしやすくなったり、感じやすくなる、という考え方です。

    痛みに敏感になる

    セロトニンは、体の痛みを抑制する働きを持っています。そのため、慢性ストレスや自律神経系の乱れなどによって、セロトニンが不足すると、『痛みの閾値』が下がり、痛みを感じやすくなります。

    痛みを感じやすくなる、つまり痛みに敏感になると、今までは感じなかったような頭痛を感じやすくなったり、頭痛が悪化しやすくなることが考えられます。

    血液中のセロトニンの関与によって起こる頭痛

    脳内の神経細胞間で神経伝達物質として働くセロトニン以外に、血液中にもセロトニンは存在します。血液中のセロトニンの多くは血小板の中に収納されており、必要に応じて血中に放出され代謝されます。

    血液中のセロトニンは血管収縮作用を持ち、交感神経系の興奮に呼応して血管の周囲の筋肉を収縮させて、血流を制限し血圧を上昇させます。

    血中のセロトニンによって血管の収縮が脳内で起こることが偏頭痛の原因の一つであると考えられています。

    女性が頭痛を起こしやすいワケ

    男女で頭痛を起こす割合は、[男性1:女性4]と圧倒的に女性が多いことが知られています。女性が頭痛を起こしやすい理由は、女性特有の月経周期で発生するPMS(月経前症候群)、そしてセロトニンの分泌変化などが関係していると考えられます。

    PMSと頭痛
    女性の場合、月経周期により女性ホルモンの分泌変化が起こります。女性ホルモンの分泌変化は、自律神経系の働きにも影響を与え、自律神経系の働きが乱れてしまうことがPMSを起こしやすくなります。頭痛はPMSの主要な症状に数えられます。

    女性はセロトニンが不足しやすい
    女性ホルモンの分泌変化によって、セロトニンの分泌変化も起こりやすくなります。女性ホルモンの分泌の乱れは、自律神経系を乱し、自律神経系の乱れはセロトニン神経の減弱につながるためです。実際、女性は男性よりもセロトニンが不足しやすいと考えられています。

    セロトニン神経が弱ることや、セロトニンが不足することは、前述のように頭痛を起こす原因になると考えられます。

    セロトニンが関係する頭痛を予防するには

    今回ご紹介した、セロトニンが関係していると思われる頭痛は、ストレスやストレスから来る自律神経系の乱れなどが原因となって起こります。こうした頭痛を予防するには、ストレスを防ぐことが最も重要です。

    セロトニンは、ストレスを緩和させる働きも持つ物質ですから、セロトニン神経を活性化させ、セロトニンを増やすことは長期的にストレスに強い心身を作ることに役立つでしょう。

    セロトニンを増やすには、『セロトニンを増やす方法』をご覧ください。


    参考:日本内科学会雑誌-「セロトニンと片頭痛

    photo credit: Rochelle, just rochelle Just…ugh–Daily image 2011–March 13 (license)

  • 男性・女性ホルモンの原料となるDHEAとは

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    DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は副腎や性腺で合成されるステロイドホルモンの一種で、男性ホルモンや女性ホルモンの前駆体(原料)になるホルモンです。DHEAのもつ抗酸化作用は、体の酸化、つまり体の老化を防ぐ働きがあるとされ、アンチエイジングに注目されているホルモンです。

    DHEAの特徴

    DHEAの特徴を簡単にご紹介します。

    • DHEAは副腎や性腺(精巣や卵巣)から分泌されるステロイドホルモンの一種でコレステロールが原料となります。
    • 一生を通じてのDHEAの分泌量は、思春期に急増した後20代前半でピークに達し、その後減少していきます。40代ではピーク時の半分程度まで減少してしまいます。
    • DHEAは性ホルモンの一種であり、充足することで気分の落ち込みを防ぎ、精神の安定を得やすいとされます。
    • DHEAは副腎で合成された後、男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストロゲン)へと変換されるため、男性・女性ホルモンの前駆体でもあります。
    • DHEAには、性ホルモンを増やす働きがあるため、性機能やホルモンバランスに問題があることが不妊の原因であると考えられる場合は、問題改善を目的とした不妊の治療にDHEAが用いられる場合があります。
    • DHEAの減少は更年期障害の発生や症状の悪化に関わっている可能性があります。
    • DHEAは性ホルモンの前駆体であるとともに、男性ホルモンとしての性質があり(ただしDHEA自体の男性ホルモンとしての性質は低い)、性欲や精力と関わりがあります。
    • DHEAは酸化作用を持ち、ストレス等によって起こる体内の活性酸素の増加を抑え、免疫力の維持や老化防止の効果があると言われています。

    DHEAの効果や作用

    抗酸化作用
    DHEAは副腎で分泌されるホルモンで、同じく副腎で分泌されるストレスホルモンである『コルチゾール』が細胞を酸化する働きを緩和する作用があります。

    コルチゾールは、ストレスに反応して分泌量が増加するホルモンで、血糖値や血圧を上昇させて、身体がストレスに対抗できるように働きますが、コルチゾールが増加すると、体内で発生する『活性酸素』の量も増加し、細胞が酸化しやすくなります。

    活性酸素の増加により細胞が酸化するとDNAが傷ついて死んでしまい減少していきます。細胞の減少は老化につながります。つまりコルチゾールの増加は、体の老化を早めてしまうのです。

    DHEAはコルチゾールの血糖値上昇や血圧上昇などの働きを抑制し、コルチゾールの分泌量を正常化する作用があるため、コルチゾールによる体の酸化、つまり老化の促進を防いでいるといえます。

    細胞を酸化から守るDHEAの働きは、肌のシワやシミの予防、血管年齢の維持、腸内環境の改善など、多岐に渡る身体機能の維持つながっており、こうした働きが若返りやアンチエイジング作用として注目されています。

    学習機能、記憶力の維持
    DHEAの抗酸化作用は脳の神経細胞を酸化から守ることで脳機能を保護することで、脳の学習機能や記憶力を維持するのに役立っていると考えられます。また、DHEAの減少とアルツハイマー型認知症の発症の関連が研究されています。

    骨や筋肉を強くする
    DHEAは『IGF-1』という物質の分泌を促進します。IGF-1は骨や筋肉の細胞の成長や発達に作用するため、DHEAによりIGF-1の分泌が促進されると、骨密度の低下を防ぐことで特に更年期の女性に起こりやすい『骨粗鬆症の予防』になったり、筋肉量を維持することで、基礎代謝量を維持し、中年期の『肥満を予防』することにも繋がります。

    参考:NCBI –10.2478/v10039-011-0060-9

    性ホルモンの分泌を促進する
    DHEAは男性らしさや女性らしさを維持する上で重要なホルモンです。DHEAは男性ホルモンであるテストステロンや女性ホルモンであるエストロゲンの前駆体であるため、性欲や精力の維持、性機能の維持などに欠かせません。

    性ホルモンの低下はホルモンバランスが乱れる大きな原因であり、男女ともに性ホルモンの分泌量が低下することで起こる、更年期障害の発生にも、DHEAの分泌量低下が関わっている可能性があります。

    抑うつ症状の緩和
    DHEAから作られる性ホルモンは、自律神経系の働きとも密接な関係があるため、性ホルモンの分泌量が乱れると、自律神経系のバランスもみだれやすくなり、そこから精神の安定を損ないやすく、DHEAの減少は気分の落ち込み、やる気の低下、集中力の低下、無気力、不安など、いわゆる抑うつ症状を起こしやすくなります。

    DHEAが正常に分泌され、性ホルモンの分泌量が安定することは、精神の安定に繋がり、抑うつ症状が起こるのを防いでくれているのです。

    血糖値の改善
    DHEAは、肥満や糖尿病などにつながる『血糖値の上昇』を抑制する働きがあります。
    ※インスリンのように血糖値を低下させるわけではない

    DHEAは、コルチゾールの働きで肝臓で『糖新生』が行われるのを抑制することで血糖値の上昇を抑えます。そのため、血糖値上昇に伴うインスリンの分泌量増加を抑制することに繋がり、結果としてインスリン抵抗性の増加によって起こる肥満(メタボリックシンドローム)や糖尿病を予防することに役立ちます。

    参考:日本老年医学会雑誌-「DHEAの老年病予防効果

    免疫力の維持

    DHEAの働きのなかでも、特に健康に影響を与えるのが免疫力の維持です。DHEAはヘルパーT細胞のTh1免疫活動の促進させ、Th2免疫活動を抑制させる働きがあることが分かっています。

    Th1は細菌やウィルスなど、いわゆる「病原菌」に反応する免疫細胞で、Th2はダニやカビ、花粉など、アレルギー症状の元になる「アレルゲン」に反応する免疫細胞。

    DHEAによりTh1の活動が促進されると、白血球内のリンパ球の働きが活性化され、免疫力が向上して病気に掛かりにくくなります。

    ただし、Th1、Th2の働きはどちらかが勝っていれば良いということではなく、「バランスが重要」です。何らかの原因でバランスが崩れて、Th1が過剰になりすぎると自己免疫疾患を起こしやすくなり、Th2が過剰になるとアレルギー症状を起こしやすくなります。

    心疾患、高血圧症、生活習慣病の予防
    DHEAはIL-6という老化現象を促進する物質の産生を抑制し、心疾患や高血圧症の予防に役立つと考えられています。

    アレルギー症状の緩和
    DHEはアレルギー症状を促進する物質(IL-4,IL-5)の産生を抑制する働きがあります。

    DHEAの働きによりTh2免疫が抑制されると、アトピー性皮膚炎や花粉症などのTh2免疫の過剰反応によって起こるアレルギー症状が緩和する可能性があるのです。

    参考:科学研究費助成事業データベース-「DHEAの老年病予防効果

    現代社会はTh2優位

    近代的な衛生環境が整っている日本では、以前に比べると生活の中で病原菌やウイルスに触れる機会が激減しました。

    病原菌やウィルスとの接触機会が減るとTh1免疫が発達しにくくなるため、その分Th2免疫が優位になりやすく、これが現代の日本では3人に1人が何らかのアレルギーを抱えていると言われるほど、アレルギー症状を起こす人が急増している原因の一つだと考えられています。

    特にTh1免疫の発達には、幼少期に病原菌やウイルスと接触することで免疫を獲得することが重要ですが、現代社会は過剰な清潔志向にあり、抗菌、滅菌グッズが満ち溢れているため、Th1が発達しにくいと考えられます。

    Th2免疫は、本来寄生虫に反応して働く免疫細胞です。現代の日本では体の中に寄生虫がいることは稀で、Th2免疫は寄生虫の代わりに花粉ハウスダストなど、人に無害なものをアレルゲンとして攻撃しだした。さらに厄介なのが、攻撃対象が寄生虫なら、寄生虫が死ねばTh2は働きを止めるが、花粉やハウスダストは無くならないため、無制限にTh2が働き続けてしまうということ。

    腸内環境の悪化も一因
    ヘルパーT細胞を始め、人の免疫機能の多くは腸に集中しており、腸は免疫機能の全体のおよそ6割を担っています。食生活の変化などにより日本人の腸内環境は年々悪化していると言われており、これもアレルギーを起こしやすくなる要因に挙げられます。

    免疫力を維持する上では、腸内環境を整えることも重要だといえます。

    DHEAと疲労

    ストレスによって分泌が増加するコルチゾールは、血糖値や血圧を上昇させ、体の酸化を促進することから、ストレスによりコルチゾールの分泌量が増加すると、その分疲れやすくなります。

    DHEAには、コルチゾールによる体のストレス反応(細胞の酸化や血糖値の上昇)を緩和する働きがあるため、コルチゾールによって疲れやすくなるのを防いでくれているといえます。このことから、DHEAは疲労回復に役立っているホルモンであるといえるのです。

    慢性ストレスで起こる副腎疲労

    DHEAは体をストレスから守り、疲労回復に役立っているホルモンですが、慢性的にストレスが続く場合には注意が必要です。ストレスが慢性化すると、コルチゾールやDHEA、その他にもノルアドレナリンやアドレナリンなど様々なホルモンを産生する臓器である副腎が疲弊してしまい、副腎の機能が低下する、いわゆる『副腎疲労』という状態に陥ります。

    副腎疲労を起こすと、コルチゾールやDHEAの分泌量は低下してしまい、ストレスに抵抗する働きが極端に弱くなり、また、精神の安定を保つセロトニンなどの神経伝達物質も合成が減少するため、精神的には気分の落ち込みや無気力などの抑うつ症状が起こりやすく、肉体的にも慢性的な疲労や倦怠感が起こりやすくなってしまいます。

    DHEAの分泌量が減少すると、疲れやすくなるだけでなく、体の酸化(=老化)、免疫力の低下肥満アレルギーの悪化など、様々な悪影響が生じる恐れがありますので、慢性ストレスにはくれぐれも注意が必要です。

    DHEAを増やすには

    DHEAを増やすには、いくつかの鉄則があります。

    食べ物
    DHEAの原料は脂質から合成される『コレステロール』です。コレステロールは肝臓で代謝されるため、DHEAの原料となるコレステロールの合成量を正常に保つには、食事からコレステロールをある程度摂取することも大事ですが、何よりも『肝臓が健康であること』が重要といえます。

    肝機能を改善する食べ物として有名なのはシジミ大豆製品、ウコンなど。その他成分としてはオメガ3脂肪酸、タウリン、ルチンなどがあり、こうした成分が含まれる食材を積極的に摂取すると良いでしょう。

    肝臓にお勧めの食材
    オメガ3脂肪酸:青魚
    タウリン:カキ
    ルチン:そば

    肝臓に負担がかかる過度のアルコール摂取や、肉類の食べ過ぎは控えたほうが良いでしょう。

    また、DHEAを産生する副腎の働きを保つのに特に重要な栄養素が『ビタミンC』です。ビタミンCはDHEAやコルチゾールなど、副腎皮質ホルモンの合成を正常化します。

    ビタミンCはレモンなどの柑橘類やパプリカなどピーマンの仲間にも多く含まれています。また、ビタミンCはサプリメントからも気軽に摂取できます。

    規則正しい生活
    DHEAを増やすには、規則正しい生活をすることが重要です。現代人の生活リズムは不規則で、体内時計も乱れがちです。実は、DHEAはストレス時に分泌量が増加するのとは別に、体内時計の働きと連動して、一日のうちで決まった時間に決まった量が分泌されるという特徴があります。

    ところが、体内時計が乱れると、こうした日内での分泌量もバラバラになってしまい、DHEAが正しく分泌されにくくなってしまうため、規則正しい生活を心がけ、体内時計を整えることがDHEAの分泌を増やすのに欠かせません。

    適度な運動
    意識的にDHEAを増やす方法として適度な運動が効果的です。

    運動をすると男性ホルモンであるテストステロンの分泌が促進されます。テストステロンはDHEAが代謝して合成されるホルモンであるため、テストステロンの分泌が促進されると、その分DHEAの分泌も促進されることになります。特に、ウォーキングや水泳、軽いランニングなどの有酸素運動をすると、DHEAの分泌量が増えるとされています。

    ただし、高齢者の場合、全力疾走やフルマラソンのような激しすぎる運動は、心臓や血管への負担も大きくなりますし、強いストレスにもなります。激しい運動は大量に酸素を消費するため体内で活性酸素が大量に発生してしまう原因となりますので、年を取ってからの体の酷使には注意が必要です。

    軽く汗を流す程度の適度な運動がDHEAを増やすには最適です。

    睡眠
    適切な睡眠時間を保つこともDHEAの分泌を増やす上で重要です。

    DHEAを産生する副腎は睡眠中に分泌量が増加する成長ホルモンの働きにより修復されます。睡眠時間が不足すると副腎の疲労が溜まりやすくなり、機能低下が起こりやすくなります。また、睡眠はDHEAを減少させる原因であるストレスを解消するのにも効果的です。

    また睡眠中から朝の起床前にかけては、一日のうちでDHEAが最も分泌されやすい時間帯です。夜間の睡眠時間が短くなると、その分、交感神経系が興奮する時間が増え、ストレスが溜まりやすくなるため、副腎からDHEAが分泌されにくくなります。

    適切な睡眠は副腎の修復だけでなく、DHEAの分泌そのものを増やす効果もあるのです。

    また、良質な睡眠を取ることは、DHEAと同じく抗酸化作用を持つメラトニンの分泌を促進することに繋がるため、アンチエイジングの観点からも大変効果的です。

    DHEAが減少すると

    DHEAが減少すると、DHEAによって保たれている抗酸化作用、抗ストレス作用、免疫力の維持、血糖値の維持などの作用が損なわれる恐れがあります。

    • 体のシミやシワが増えて老化しやすくなる
    • 脳の神経細胞が減りやすくなってもの忘れが激しくなる
    • 血糖値が上昇し、メタボリックシンドローム、高血圧症、糖尿病、心筋梗塞などの生活習慣病を引き起こしやすくなる
    • 免疫力の低下によってガンなど重篤な病気に罹りやすくなる。

    DHEAが減少する原因

    DHEAの減少は以下のようなことで起こりやすくなります。

    • 加齢
    • 糖分の摂り過ぎ
    • 栄養バランスの偏り
    • 過度のダイエット
    • ストレス
    • アルコール
    • タバコ
    • 激しい運動(激しい運動はそれ自体がストレスで、活性酸素が増加する)

    加齢から来るDHEAの減少は誰しも避けられませんが、それ以外の生活習慣はできるだけ見直すようにしましょう。

    更年期とDHEAの関係

    DHEAは男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストロゲン)へと変換されるホルモンです。更年期を迎えると精巣や卵巣の機能が衰え、それまで卵巣や精巣が主体で担ってきた性ホルモンの合成量が急激に低下するため、DHEAの重要性が相対的に増加します。

    ところが、更年期障害を起こす50歳前後の年齢では、性機能と同様に副腎でのDHEAの分泌量も相当に下がっており、これも更年期障害の症状を悪化させる原因になってしまうと考えられます。

    DHEAの分泌量を保つことは、それだけ更年期障害の症状を緩和するのに効果があるといえます。実際、更年期障害の症状を緩和させる治療としてDHEAが処方される場合があり、効果が現れることがあるようです。

    詳しくは、『女性の更年期障害』、『男性の更年期障害』をご覧ください。

    DHEAのサプリメント

    DHEAのサプリメントは国内では販売されていません。入手はインターネットなどから外国経由で個人輸入する形が一般的となります。

    DHEAの摂取量の目安は、男性は一日20~50mg、女性は一日10~30mgが適量とされます。

    ※40歳以下では、体内にDHEAが十分あるため通常はサプリメントの摂取は不要だとされます。40歳未満の若年者がDHEAのサプリメントを使うと、必要以上に性ホルモンが増えて悪影響を及ぼす可能性があります。

    DHEAの副作用

    DHEAは安全なサプリメントとしてアメリカなどでは広く販売されていますが、いくつかの副作用が起こる場合があります。

    多毛症(毛が濃くなる)/皮膚炎/脂性(肌が脂っぽくなる)/にきびの増加/発汗の増加、多汗/脱毛/痒み/高血圧/月経不順/気分の変調/長期間の服用後、服用中止で倦怠感や不整脈など/で乳がんや前立腺がんのリスク増加
    (症状の一例です)

    サプリメントを服用後に何らかの異変を感じた場合は、速やかに服用を停止し、専門医へ相談することをお勧めします。

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  • 更年期障害になるとセロトニンが不足しやすい

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    女性の閉経時期前後、いわゆる更年期に起こる更年期障害は、脳内のセロトニンの分泌にも影響を与えます。脳内で精神の安定などに関わる働きをしているセロトニンは、更年期障害が起こると不足しやすく、イライラや不安など悪い影響が生じます。

    エストロゲンの減少がセロトニン不足につながる

    更年期障害が起こる原因の一つは、卵巣機能の低下によって起こる女性ホルモンである『エストロゲン』の分泌低下です。

    脳内でセロトニンを分泌するセロトニン神経は、脳内の自律神経系の支配を受けており、エストロゲンなど女性ホルモンの分泌は、同じく脳内で内分泌系の支配を受けています。内分泌系と自律神経系の働きはそれぞれ密接な関わりがあり、いずれかの働きに乱れが生じると、もう一方の働きも乱れやすくなります。

    通常の月経周期中、エストロゲンは周期前半に多く分泌されるホルモンで、このときセロトニンの分泌も促進されやすくなるため、月経周期の前半は、精神的にも安定しやすく、イライラや不安などPMSの諸症状も起こりにくい時期です。

    逆に月経周期の後半(排卵日後)は別の女性ホルモン『プロゲステロン』の分泌が増加し、エストロゲンの分泌量は低下していき、セロトニンの分泌量も低下してしまうため、イライラや不安、倦怠感などPMSの症状が現れやすくなると考えられています。

    更年期に差し掛かり、エストロゲンの分泌の慢性的な低下が起こると、内分泌系の働きは乱れ、同時に自律神経系の働きにも乱れが生じやすくなります。これが更年期障害の諸症状が発生する大きな原因であると考えられています。

    このように更年期障害の発生と同時に起こりやすい自律神経系の乱れが、セロトニン神経系の働きの乱れにもつながり、脳内でセロトニン不足が起こりやすくなるのです。

    ストレスがセロトニン神経を弱らせる

    更年期障害は長い人になると10年間ほども続くため、その期間中は更年期障害の症状によるストレスが長く続き、慢性化してしまう場合があります。

    慢性的なストレスは、自律神経系の働きを乱してしまうため、脳内のセロトニン神経が徐々に弱って、セロトニンを分泌する力も段々と弱ってしまいます。

    詳しくは『セロトニンとストレス』をご覧ください。

    食欲低下がセロトニン不足に

    人は年齢と共に体の細胞が減っていき、基礎代謝が低下していくため、年齢を重ねると、だんだんと食欲が落ちていくことは自然なことです。

    特に更年期障害では、ホルモンバランスの乱れから、吐き気や食欲不振が起こりやすく、食欲が一段と落ちやすくなります。

    セロトニンの原材料はトリプトファンというアミノ酸で、肉や魚などのタンパク質に含まれています。また、トリプトファン以外にもビタミンやミネラルなど、様々な栄養素がセロトニンを合成する上で欠かせません。

    食欲が低下して食事量が減ると、脳内でセロトニンを合成するのに必要な栄養素が不足しやすくなり、セロトニン不足を起こしやすくなってしまいます。

    トリプトファンはサプリなどで補うこともできます。

    腸内環境の悪化でセロトニンの材料不足が起こる

    更年期は腸内環境が悪化しやすい年齢でもあります。

    人の腸には、消化や吸収、免疫力の維持などの重要な機能があります。腸の機能は年齢とともに機能が低下していきます。これは腸の細胞にも老化が起こるためです。

    腸の機能低下は、腸内環境の悪化につながり、腸内細菌の減少、免疫力の低下によって、生活習慣病など様々な病気を起こす原因となります。

    また、腸内環境の悪化により、セロトニンの材料となるトリプトファンなどの栄養素を文化して吸収する働きも弱くなるため、脳内に届けられるセロトニンの材料が不足しやすくなります。

    詳しくは『セロトニンと腸内環境』をご覧ください。

    運動量低下でセロトニン不足に

    歳を取るとともに、一日の活動量は自然と落ちやすくなります。更年期障害が起こると、その煩わしさから、さらに運動が億劫になります。

    脳内のセロトニン神経は、呼吸や脈拍、咀嚼、歩行など、一定のリズムを刻む運動によって活性化されるという特性を持っています。運動量が落ちると、その分セロトニンを活性化させる機会が損なわれることに繋がるため、セロトニン神経が弱りやすくなります。

    セロトニン神経を活性化させる運動は、軽い歩行や腹式呼吸水泳サイクリングなど、更年期でも比較的無理なく出来る運動が多いため、積極的に生活の中に取り入れたり、趣味にしてしまうと良いでしょう。

    詳しくは『リズム運動でセロトニンを増やす方法』をご覧ください。

    グルーミング不足がセロトニン不足に

    夫や子ども、家族とのふれあいは、グルーミングと呼ばれる行為に該当し、セロトニンを分泌させるのに効果的です。

    ところが、更年期傷害が起こりやすい40代後半から50代前半は、多くの女性が子育てが一段落する時期と重なり、また、夫との結婚生活も更年期障害の症状による煩わしさから、倦怠期に突入しやすい時期です。(大いに個人差があるかと思いますが)

    さらに、実の両親は高齢化によりすでに他界している場合や、介護が必要な年齢を迎え、家族との団らんやふれあいの時間は、以前に比べると減少しがちです。

    家族とのグルーミングの頻度が減ると、その分セロトニンを分泌させる力が落ちて、セロトニン不足が起こりやすくなります。

    グルーミングの効果は、家族だけでなく、友人とのおしゃべりや、犬や猫などペットとのふれあいによっても補うことができますので、できるだけ色々な人と楽しくコミュニケーションを取る機会を設けると良いでしょう。

    詳しくは『グルーミングでセロトニンを増やす方法』をご覧ください。

    男性の更年期障害でもセロトニンが不足しやすい

    更年期障害は、女性だけではなく男性にも起こります。男性の更年期障害は、40代後半から50代前半に発症する人が多いとされます。

    男性の場合、テストステロンという男性ホルモンの減少が更年期障害を発生させる引き金となります。また、男性の場合も、仕事や生活の中でストレスを抱えることが、更年期障害の症状を悪化させる原因となります。

    男性の更年期障害は性機能の低下だけでなく、女性と同じように、セロトニン不足を起こしやすく、様々な自律神経系の失調症状が起こることがあります。体調の異変を感じたら、医師へ相談しましょう。

    詳しくは『男性の更年期障害』をご覧ください。

    まとめ

    体調や心情の変化が著しい更年期には、今回ご紹介した他にもセロトニンは様々な原因によって不足してしまいます。更年期障害はセロトニンの不足を引き起こし、また、セロトニンの不足は更年期障害のさらなる悪化にもつながります。

    こうした負の連鎖が起こらないよう、日頃からセロトニン不足を起こさないように予防するには、積極的にセロトニンを増やす方法を実践することが有効です。

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