加齢臭の改善に効果的な対策のひとつに日常生活に運動を取り入れることがあります。中でも特に有効なのが、有酸素運動です。加齢臭を改善するための有酸素運動は「適度な負荷」と「ある程度の長時間継続すること」が重要となります。日常生活内で実践しやすい有酸素運動に注目して説明していきます。

有酸素運動とは

そもそも有酸素運動とは、酸素を消費しながら行う運動の総称で、ウォーキングやジョギング、水泳のような比較的ゆっくりと、長時間続けられる運動が有酸素運動として挙げられます。

有酸素運動とは反対に酸素を消費エネルギーにせず、筋肉内に蓄えられたエネルギー源だけで直接筋肉を動かすのは『無酸素運動』と呼ばれます。

無酸素運動は突発的に大きな力を出すことが出来ますが、筋肉内に蓄えられたエネルギー源は少ないため、長時間運動を続けることはできません。重たいものを持ち上げる筋トレや、100M走のような短距離走は無酸素運動に該当します。

有酸素運動のエネルギー源になるのは、「酸素」と「糖質(炭水化物)」、そして「脂肪」です。有酸素運動をするメリットは、酸素や糖質など、運動のエネルギー源を全身へ素早く送るために心肺機能や血流が改善すること、脂肪をエネルギー源にするため、LDLコレステロールや中性脂肪など体脂肪の減少が期待できること、そして、発汗作用による汗腺の活性化です。

有酸素運動の種類としてはウォーキングや散歩、ジョギング、マラソン、サイクリング、水泳、アクアビクス、エアロビクスなどがあります。

有酸素運動をするメリット

一般的な有酸素運動のメリットは、酸素や糖質など運動のエネルギー源になる物質を全身へ素早く送るために心肺機能や血流が改善することと、脂肪もエネルギー源になるので、LDLコレステロールや中性脂肪など体脂肪の減少が期待できること、そして、発汗作用による汗腺の活性化と、運動によるストレス解消効果と、睡眠の質の改善などです。

中でも、加齢臭対策に特に効果的なのが、有酸素運動によって得られる次のようなメリットです。

  • 体脂肪の減少
  • 汗腺の活性化
  • ストレス解消
  • 睡眠の質の改善

体脂肪の減少

有酸素運動が加齢臭の対策に効果的な理由の一つとして、体脂肪の減少が挙げられます。

有酸素運動のエネルギー源は、酸素と糖質、そして脂肪です。運動のエネルギー源として脂肪が使われるため、体に蓄えられた中性脂肪やコレステロールを減少させることができ、体脂肪を減少させる効果が期待できるのです。

体脂肪は、増えすぎると加齢臭が悪化する原因の一つとなります。

加齢臭を発生させる原因物質である『ノネナール』は、体脂肪から作られる脂肪酸などが皮脂腺から分泌される皮脂成分として混ざり、それらが活性酸素や紫外線、皮膚常在菌などの影響で酸化する過程で形成される物質です。

脂肪は、細胞膜を形成したり生命活動の源になるなど、生きていく上で必要不可欠ですが、体脂肪が増えすぎると皮脂腺から排出される脂肪酸が増加してノネナールの発生を助長させてしまいます。

極端な言い方をすれば、「加齢臭の根源は余分な体脂肪である」とも言えるため、有酸素運動で体脂肪を減少させることは、加齢臭を改善する一つの有効な手段なのです。

汗腺の活性化

汗腺とは、汗を排出する皮膚にある穴のことです。汗をかくことのもっとも重要な働きは『体温の調節』で、運動をすると体温が上昇するため、体温を下げるための機能として発汗が起こり、汗腺から汗が沢山出てきます。

運動しないと汗腺の機能が低下する
日頃あまり運動をしないで汗をかく習慣がない人は、汗腺の機能が低下してしまい、汗をかく機能そのものが低下してしまいます。汗をかく汗腺は全身にありますが、運動不足で汗腺の機能が低下すると、全身にある汗腺のうちの多くは休眠状態になってしまい、残った数少ない汗腺から集中して汗が出やすくなってしまいます。

一箇所から集中して出る汗は、通常よりもミネラルや老廃物などの成分が濃い、いわゆる「濃い汗」、「悪い汗」になり、それが皮膚の雑菌のエサになって体臭を悪化させる原因になり、ノネナールと合わさって加齢臭を悪化させてしまうのです。

また、機能が低下した汗腺の付近にも皮脂を分泌する皮脂腺がありますから、汗はかきにくくても皮脂は分泌されるのですが、汗によって皮脂が皮膚上に押し出されにくくなるため、皮脂が皮膚の中に蓄積してしまい、時間が経つにつれて、蓄積した皮脂がどんどんと酸化して、過酸化脂質を発生させ、ノネナールを増加させる要因になっているのです。

有酸素運動をして発汗する習慣をつくることで、中年世代の衰えがちな汗腺の機能を活性化し、皮脂の蓄積によるノネナールの増加と、濃い汗による体臭の悪化を改善する効果が期待できるのです。

ストレス解消

運動をすると、快感物質であるドーパミンや、精神安定作用のあるセロトニンといった脳内の神経伝達物質の分泌が活発になるため、脳や体は日頃の悩みやストレスから開放され、ストレスを解消する効果が期待できます。

ストレスとは日常生活の中にある、人間関係や仕事、家庭、貧困など様々な事柄によって蓄積されます。脳や体がストレスを感じると、『コルチゾール』などストレスホルモンがストレスに対抗するために分泌されます。

ストレスホルモンが分泌されると、同時に体内で活性酸素が大量に発生します。活性酸素は、必要以上に発生すると、体内の細胞や組織をどんどん酸化させていってしまいます。

活性酸素はノネナールが発生する原因となる、『パルミトレイン酸』も酸化させるし、それ以外の脂質もどんどん酸化させて『過酸化脂質』を作り出してしまう、加齢臭が悪化する最大の要因とも言うべき物質です。

つまり、ストレスは加齢臭を悪化させる大きな要因であり、有酸素運動をすることはストレス対策に、そして加齢臭の改善にもつながるのです。

また、運動をすると自律神経系のバランスも整いやすく、現代人のストレスで乱れがちな自律神経系が整うことで、休息時のリラックス効果などが向上して、ストレスを解消しやすくなります。

睡眠の質の改善

運動をすると疲労がたまるため、その疲労を回復するために通常よりも深い睡眠が発生しやすくなります。深い睡眠を得るときに分泌が促進されるのが、睡眠ホルモンである『メラトニン』です。

メラトニンの持つ作用には、睡眠を促進するという働き以外にもう一つ、体の細胞を酸化から守る『抗酸化作用』があります。メラトニンの抗酸化作用とは、体内で発生する活性酸素などの体を酸化させてしまう物質を除去する働きのことで、抗酸化作用が高ければ高いほど、加齢臭の原因となる酸化物質の発生を抑えることが出来るため、加齢臭の改善が期待できるのです。

つまり、運動で睡眠の質が改善されると、より強い抗酸化作用を得ることができ、加齢臭が発生しにくくなることが期待できるのです。

加齢臭に効果的な有酸素運動とは

具体的に加齢臭の改善に効果的な有酸素運動の種類や条件などをご紹介します。

効果的な有酸素運動の条件

加齢臭に効果を発揮する運動とそうでない運動があります。効果的な有酸素運動は次のような条件が当てはまります。

  • 息があがるかあがらないかくらいで、負荷が強すぎない長時間続けられる運動
  • 1回あたりの時間の目安は30分程度継続が出来る運動
  • 週に2回~3回程度出来る運動
  • 長期間継続可能な運動

すぐに息が上がってしまうような負荷の強い運動は、脂肪の燃焼効果があまり期待できませんし、そもそも長時間続けることも難しいです。

また、加齢臭は一朝一夕では改善できないため、運動は継続的に長期間続けられるものでなくてはなりません。すぐに飽きてしまうような運動や、膝や腰などに負担が強くて怪我をしやすいような運動は不向きです。

効果的な有酸素運動の種類

水泳
水泳は得意不得意があり、またプールに通う必要があるので少し敷居が高いですが、体脂肪の減少、心肺機能や血の流改善、発汗、ストレス解消など、加齢臭の改善効果はピカイチです。泳ぐのが苦手な人は、『水中ウォーキング』も効果的です。

水泳の強みは、水の中で行うという点です。水中では空気中よりも強い圧力がかかるため、水中にいるだけでもかなりの負荷になりますし、泳いだり歩いたりするには全身の筋肉を使う必要があるため、思った以上に効率的に運動効果を得ることが出来るのです。

ウオーキング
ウオーキングは、散歩よりも少しだけ速い速度であることです。運動強度が低いため、運動不足の人でも始めることができます。ウオーキングは手足をリズミカルに動かす、リズム運動という種類の有酸素運動で、リズム運動によってセロトニン神経を活性化することに結びつき、ストレス解消効果が期待できますし、じわりと確実に脂肪を燃焼させて体脂肪を減少させる効果も期待できます。

ウオーキングの利点は誰でもいつでもどこでも出来るという点。難点は毎日同じ道を歩いていると飽きやすいことと、硬いアスファルトを歩いていると膝などを痛めやすいという点です。

サイクリング
アニメなどの影響から、ロードバイクなどのスポーツバイクが人気が高まっているサイクリングですが、これも加齢臭対策にはお勧めの有酸素運動です。

サイクリングに使う自転車は、別にロードバイクのような高性能は必要なく、その辺のママチャリで十分です。サイクリングも足をリズミカルに動かすリズム運動に分類され、セロトニン神経の活性化によるストレス解消と、体の芯にあるインナーマッスルも鍛えることが出来る運動でもあります。

加齢臭が気になりだす中年世代なら金銭的に余裕がある人も多いと思いますので、思い切ってロードバイクを始めてみるのも良いでしょう。ロードバイクは普通の自転車と比較できないほど高価ですが、驚くほど速く、そしてはるか遠くまで走ることが出来るため、趣味がない人でも趣味にしやすい運動です。何より一人で遠くまで走ることが出来るので、休みの日に一緒に運動する人がいなくても気軽に取り組めるのも利点です。