「あの人は怒りっぽいからカルシウムが足りない」などと昔からよく言われますが、すぐにイライラしたり、キレて怒りっぽいのはノルアドレナリンの分泌が過剰なせいかもしれません。いつもハイテンションな人も、ノルアドレナリンがたくさん分泌されているせいかもしれません。
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攻撃性が増して、キレたりイライラしやすい
ノルアドレナリンは分泌されることで交感神経系を強く刺激して、攻撃性や恐怖感を増す作用があるため、ノルアドレナリンが必要以上に分泌されると神経が昂ぶり、イライラしやすく、落ち着きがなくなり、キレたり攻撃的になりやすくなります。
誰しも、一時的にはイライラしたりすることがあるため、一過性のものであれば特に気にする必要はありませんが、深刻なストレスを抱えているときなどは、常にイライラを感じるようになり、ストレスとの相乗効果でノルアドレナリンが過剰に分泌され続けてしまうかも知れません。
ハイテンションはノルアドレナリン過剰
ノルアドレナリンの分泌は交感神経系を昂らせるため、躁状態、いわゆるハイテンションな状態になりやすくなります。スポーツ観戦などではノルアドレナリンが分泌されやすくなり、お酒なども相まって気分が高揚し、そこにさらに群雄心理も重なると、普段大人しい人でさえ、フーリガンのようになって暴れてしまうことがあります。近年のサッカー日本代表戦後の渋谷駅前の交差点でみられる若者の狂喜乱舞も、群集心理とノルアドレナリンの分泌過剰が影響しているかもしれません。
分泌過剰から、やがて枯渇
強いストレスを受けると、はじめのうちはストレスに抗うため、ストレスホルモンであるコルチゾールやノルアドレナリンが分泌されて、心身を正常に戻す働きをします。
ところが、長期間に渡って『過剰なストレス』が続くと、そのうち次第にノルアドレナリンが不足しだし、最後には枯渇してしまうのです。その結果、ストレスに抗う意欲がなくなり無気力状態になります。
こうして、ノルアドレナリンが枯渇した状態になると、ノルアドレナリン受容体は、少なくなったノルアドレナリンを有効に使用しようとして、感受性を上昇させようとします。すると、ちょっとした小さな事にでも過敏に反応するようになり、過剰な攻撃性や逃避反応を示すようになります。
小さなことが気になる
ノルアドレナリンが減少・枯渇に転じると、その結果、『ストレス耐性』が下がり、パニックを起こしたり、キレやすくなったり、普段は気にならない周りの物音や臭いなど、小さなことが気になって仕方なくなったり、消極的でネガティブな感情(恐怖感、自殺観念、強迫観念、不安感など)を引き起こす原因にもなります。さらに、ノルアドレナリンと同じく、ストレスに反応して分泌されるストレスホルモンであるコルチゾールは、過剰に分泌され続けることで脳内で記憶を司る海馬の細胞破壊して、海馬が萎縮してしまうことが分かっています。海馬の萎縮は、うつ病やPTSD、アルツハイマー型認知症などにみられる症状で、物事の認知機能が低下してしまいます。
うつ病の発症プロセスと類似
ノルアドレナリンの分泌が増えると、心のバランスを保つ作用のあるセロトニンが分泌されて、ノルアドレナリンの暴走を防ごうと働きます。しかし、ノルアドレナリンが枯渇するのと同じように、ストレスがかかり続けることで、セロトニンもまた、枯れてしまいます。
ストレスに反応して分泌されるノルアドレナリンやセロトニン、コルチゾールと言った物質が過剰分泌から、やがて枯渇するまでに起こる気分や体調の変化(最初はストレスに抗いやる気や攻撃性を示し、最後はやる気ゼロの抑うつ状態)は、典型的なうつ病の発症プロセスにも類似している点が多々あります。
血圧上昇で生活習慣病のリスクも
ノルアドレナリンには交感神経系を刺激して血圧や血糖値などを上げる作用があります。また、交感神経系が刺激され続けることで、副交感神経系の働きが弱まり、胃や腸と言った内臓の機能が制限され、睡眠の質も悪くなって成長ホルモンなどにより細胞の修復機能も弱くなります。こうした交感神経系の過剰な状態が続くと、高血圧による心筋梗塞や脳梗塞、メタボリックシンドロームや糖尿病と言った生活習慣病、ガンなどに罹るリスクが高まる恐れがあります。
このコーナーでは、ノルアドレナリンについての話題を全5ページで紹介しています。
★次のページでは『ノルアドレナリンを増やす方法』をご紹介します。
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