40歳前後になると発生する独特の体臭である加齢臭。加齢臭は睡眠不足によって悪化してしまうことがあります。睡眠不足が加齢臭の悪化を招く理由などをご紹介します。

睡眠不足でメラトニンが減る

人が眠りに就くとき、睡眠ホルモンである『メラトニン』の分泌が促進されます。メラトニンには人を眠りに誘う作用以外にも、体の細胞を酸化から守る抗酸化作用を持ち合わせています。

睡眠時間が減少すると、その分メラトニンの分泌量が減少してしまい、本来体が持つ抗酸化作用が低下してしまうため、脂肪やコレステロールの酸化が進んでしまい、加齢臭の原因となる『過酸化脂質』の発生を増加させてしまうのです。

睡眠不足で成長ホルモンが減る

成長ホルモン』は、日中の活動により傷害したり酸化して傷ついた細胞を再生、修復する働きを持っています。成長ホルモンの分泌が活発になるのは人が眠っている間です。

睡眠中は、成長ホルモンによって体中の細胞がメンテナンスされている時間でもあり、睡眠時間が短くなるとその分細胞のメンテナンス時間も短くなってしまうため、傷ついたり酸化したままの細胞が増えて、そうした細胞は死んでしまったり過酸化脂質を生み出す元になってしまうのです。

睡眠不足でストレスが増える

人が睡眠をする理由の一つは、日中に溜まったストレスを解消するためだと言われています。肉体のストレス(傷など)は、成長ホルモンが睡眠中に癒やしてくれます。

精神的なストレス(怒りや悲しみなど)の解消は睡眠中ので行われています。

睡眠中、記憶を司る脳の海馬では『記憶の整理』が行われており、日中に経験した事柄のうち、記憶として留めておくものと、そうでないもの取捨選択しています。

取捨選択する事柄の中には、怒りやイライラ、悲しみなどネガティブな経験からによって生まれた『精神ストレス』も含まれます。

嫌なことがあっても一晩眠ったら忘れてた」などというのも、脳内で記憶の整理が行われて、ネガティブな感情、つまりストレスを生み出す原因となっていた記憶や経験を薄れさせてくれるという効果があるのです。

睡眠はこうしてストレスの元となる、嫌な出来事やネガティブな感情などを薄れさせてくれる働きがあるのですが、睡眠不足になると、その分睡眠中の記憶の整理が疎かになり、嫌な出来事の記憶や、ネガティブな感情などを次の日へ持ち越してしまうため、ストレスが増えて溜まっていってしまうのです。

ストレスホルモンが増える

ストレスが加齢臭を悪化させる理由は、ストレスによってストレスホルモンが増えるためです。ストレスホルモンである『コルチゾール』や『アドレナリン』は、脳がストレスを感じることで分泌が促進されます。ストレスホルモンの分泌が増えると、その過程で体内では活性酸素が大量に発生します。

疲労がたまりやすい

睡眠不足になると、疲労が溜まりやすくなります。

疲労はストレス症状の一種でもありますが、精神の疲労、肉体の疲労など様々な種類の疲労があります。

脳や体に疲労が溜まってしまう原因の一つは、体内に溜まった活性酸素です。活性酸素は細胞を酸化させる物質で、日中に活動することで活性酸素が発生して、細胞が酸化することで脳や体は疲労を感じます。

睡眠中、メラトニンをはじめ、様々な抗酸化物質によって活性酸素は除去されていますが、睡眠が不足するとその分体内に留まりやすくなるため、溜まった活性酸素によって脳細胞や筋肉が酸化して傷害されて、疲労を感じやすくなってしまうのです。

体に溜まった活性酸素は、脂肪やコレステロールを酸化させて、過酸化脂質を発生させてしまうため、睡眠不足による疲労の蓄積も加齢臭の悪化につながってしまうのです。

睡眠不足で体脂肪が増えやすい

睡眠不足によるストレス状況が続くと、脳はストレス下においても生存するために、積極的に脂肪を溜め込もうとします。睡眠が不足している場合、食事から得る糖質や脂質は、通常よりも体脂肪として体に定着しやすくなります。

また、糖や脂質を脂肪として溜め込もうとする一方、筋肉の主成分であるタンパク質を積極的に分解してエネルギー源にするため、睡眠不足が続くと筋肉がどんどん分解されて減っていき、基礎代謝が低下して、太りやすい体質になります。

こうして体脂肪が増えると、皮脂腺から分泌される皮脂量も増加しやすくなります。

皮脂量が増加すると、加齢臭の原因物質となる『ノネナール』の原料の皮脂成分『パルミトレイン酸』の分泌量も増加します。パルミトレイン酸が増えると、活性酸素や過酸化脂質などによって酸化されてノネナールが発生して加齢臭が悪化しやすくなってしまうのです。

交感神経系が興奮する

睡眠不足になると、自律神経系のうち交感神経系が興奮した状態が続くことになります。

皮脂の分泌が増える

交感神経系は脳を覚醒させ、脈拍や血圧を上昇、汗腺や皮脂腺の活動を活性化させます。皮脂腺の活動が活発化すると、その分皮脂の分泌量も増えることになり、ノネナールの原料となるパルミトレイン酸が皮脂成分として皮膚表面に分泌されやすくなってしまいます。

睡眠が不足すると皮脂の量が増えて、その分ノネナールの発生も増えてしまい、加齢臭が悪化してしまうのです。

脈拍や血圧が上がる

睡眠時間が短くなり交感神経系が興奮した状態が続くと、時間に比して脈拍や血圧が上昇した状態も長くなります。脈拍や血圧の上昇は、酸素消費の増加につながるため、起きている時間が長ければ長いほど、呼吸で体内に取り込む酸素量が増加することになります。

また、睡眠時間の減少は、レム睡眠の増加にもつながります。レム睡眠中は脳が覚醒した状態に近く、呼吸は荒く、脈拍も上がりやすくなります。

こうした酸素消費量の増加は、体内で発生する活性酸素の量も増えることにつながります。

血糖値が上がる

睡眠不足が続くと、血糖値を下げる役割をするホルモンである『インスリン』が出にくくなり、食事などをしたあとに血糖値が下がりにくくなります。

また、睡眠不足によるストレスの増加によって分泌されるストレスホルモンによってインスリン抵抗性が上がるため、インスリンが分泌されても、血糖値を下げる作用が働きにくくなり、全般的に血糖値が上がりやすくなります。

抗酸化物質が働きにくくなる
血糖値の上昇は、血中で働く抗酸化物質『SOD』の働きを阻害してしまう要因となり、SODの働きが悪くなることで、活性酸素が除去されずに増加してしまうことにつながります。

睡眠不足で活性酸素が増える

メラトニンの減少、ストレスや疲労の蓄積、肥満、交感神経の興奮など、睡眠不足で起こる一連の問題は、全て『活性酸素』の増加につながることがわかっています。

活性酸素は、加齢臭を悪化させる直接の要因として、中年世代が加齢臭対策をする上では最も注意しなければならない物質です。

体内で発生する活性酸素が、脂肪を酸化させて過酸化脂質を増やし、増えた過酸化脂質が皮脂成分をさらに酸化させてしまうことで、加齢臭の原因物質であるノネナールが発生するのです。

もともと加齢臭が発生する第一の要因は歳をとること、つまり加齢ですが、加齢臭のニオイが強いか弱いか、または、加齢臭が発生する時期が早いか遅いかなど、人によって個人差がかなりあります。

人により個人差が生じる加齢臭をさらに悪化させてしまうのは、睡眠不足による活性酸素の大量発生なのです。

日本人は睡眠不足

そもそも、日本人は睡眠時間が不足気味です。厚生労働省によると、「日本人の4割が睡眠時間6時間未満」であるとの調査結果もあり、睡眠不足気味の日本人の中でも、とりわけ睡眠が不足しているのが、まさに30代、40代、50代の働き盛りの加齢臭世代なのです。

働き盛りの40歳前後の世代で加齢臭が発生しだすのは、忙しさから来る睡眠不足やストレスの増加、乱れた食生活や生活習慣などによって、体内で発生する活性酸素が急増してしまうことが一つの大きなきっかけになっていると考えられるのです。

睡眠環境の改善が加齢臭の対策の鍵に

睡眠不足は体内で発生する活性酸素や皮脂を増やしてしまうので、『加齢臭が悪化する原因』になってしまいます。

裏を返せば、しっかりと睡眠をとることで、活性酸素の発生を抑制することができ、加齢臭の原因となるノネナールの発生も抑えることが出来ると言えます。

加齢臭の対策』は、睡眠の質や食生活などの生活習慣を見直すことが第一です。臭いをごまかす消臭グッズに躍起になる前に、しっかりと内側から加齢臭対策を心がけましょう。