40歳前後で増加しはじめる加齢臭。加齢臭が発生しだす時期やニオイの強さは人それぞれですが、日頃の生活習慣の中にも加齢臭を悪化させてしまう原因がたくさんあります。知らずに習慣化していると、本来は防げるはずの加齢臭が強烈になってしまうこともありえます。加齢臭が悪化してしまう原因を紹介します。
目次
原因となる皮脂成分の増加で加齢臭が悪化
加齢臭の悪化は、皮脂の増加であると書かれていることが多いのですが、実は、全身の皮脂腺から分泌される皮脂の量そのものは年齢とともに減少します。ところが、皮脂の成分の中には、若い頃にはあまり分泌されず40歳前後、つまり加齢臭が発生しだす年代になると分泌量が増加するものがあり、この加齢によって増加する皮脂成分が加齢臭を発生させる根源であると目されています。
40歳前後で急増する皮脂成分「9-ヘキサデセン酸」
年齢とともに他の皮脂の分泌量が下がる中で分泌量が増えるこの皮脂成分は、加齢臭のニオイの原因物質であるノネナールの材料になる皮脂で、『9-ヘキサデセン酸』と言います。9-ヘキサデセン酸は『不飽和脂肪酸』の一種で、体の脂肪組織に含まれる物質です。
不飽和脂肪酸は食品ではイワシやサバなどの青魚や、料理用の植物油に多く含まれる脂肪酸で、血中のコレステロール値を下げるなど、人体に有用な働きがあることが知られています。
9-ヘキサデセン酸そのものは無臭ですが、不飽和脂肪酸は分子結合がもろく酸化してノネナールのもとになるになりやすいため、増えすぎると加齢臭を悪化させる原因となってしまいます。
加齢臭が出始める40歳前後で9-ヘキサデセン酸が増加してしまう原因の一つとして考えられるのが、新陳代謝の低下による体脂肪の増加(肥満で加齢臭が悪化しやすい)と、体の抗酸化作用の低下による活性酸素の増加です。人は誰しも歳を取るにつれて、若い頃よりも筋肉量が減って新陳代謝が減り、体に脂肪がたまりやすく、9-ヘキサデセン酸が皮脂成分として分泌されやすくなってしまうのです。
抗酸化力が低下して活性酸素と過酸化脂質が増加
体の持つ抗酸化力が加齢により低下することで、体内で活性酸素が増加しやすくなります。活性酸素は、人の免疫機能の一部を担う物質ですが、増えすぎると体内の様々な細胞を酸化させて変質させてしまう物質でもあります。
活性酸素によって脂肪を酸化されると、過酸化脂質となります。活性酸素や過酸化脂質は周囲の細胞を雪だるま式に酸化させてしまうため、体内では抗酸化力が一定値以下に下がると、どんどん活性酸素や過酸化脂質が増えてしまい、体が酸化しやすい状態になってしまいます。
こうした活性酸素や過酸化脂質が大量に増加することで、皮脂から分泌される9-ヘキサデセン酸は酸化しやすくなり、皮膚表面でノネナールが大量に発生して加齢臭が悪化してしまうのです。
加齢で酸化を防ぐホルモンの減少
40歳前後で加齢臭が増える原因として考えられるのが、年令によって酸化を防ぐ抗酸化ホルモンが減少することです。逆に、若い頃に加齢臭が臭わない理由としては、体の持つ抗酸化作用が加齢臭を発生させる原因物質より勝っており、ノネナールが発生するのを押さえ込んでくれている事が考えられます。
メラトニン
代表的な抗酸化ホルモンは、睡眠ホルモンとして知られる『メラトニン』です。メラトニンは就寝前に分泌量が増える催眠効果のあるホルモンですが、同時に、高い抗酸化作用があることも分かっています。メラトニンは活性酸素や一酸化炭素などのフリーラジカルと呼ばれる物質を分解・除去する力があります。
メラトニンは、幼少期に多く分泌されますが成人を境に減少に転じることが分かっており、メラトニンの減少によって体の持つ抗酸化力が衰えることが、40歳前後で体を錆びさせる活性酸素が増えてしまい、睡眠不足が加齢臭を悪化させる原因の一つであると考えられます。
DHEA
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は副腎や性腺で作られる性ホルモンの前駆体となるホルモンで、活性酸素の発生を抑える抗酸化作用を持ちます。DHEAは加齢で減少するため、加齢によりDHEAの分泌が減少することが、加齢臭の発生の原因の一つとして考えられます。
エストロゲン
エストロゲンは女性ホルモンの一種で、細胞の酸化を防ぐ作用や皮脂の分泌を抑える作用があると言われています。女性の加齢臭が目立たないのは、このエストロゲンが分泌されるためだと考えられています。
ただし、エストロゲンも加齢とともに減少するホルモンです。特に閉経後には急激に分泌が減少して、更年期障害の引き金にもなります。女性の加齢臭は更年期に急増するとも言われており、エストロゲンの減少が女性の加齢臭の発生に関係している可能性があります。
活性酸素の増加
皮脂の増加や抗酸化作用を持つホルモンの減少と時を同じくして、体内で発生する活性酸素が増加することが、加齢臭の悪化の大きな原因と考えられます。
皮膚常在菌(善玉菌)の減少で加齢臭が悪化する
人の腸には『腸内フローラ』と言われる腸内細菌叢があり、乳酸菌ビフィズス菌、大腸菌ウェルシュ菌など様々な種類の善玉菌や悪玉菌が生息しています。
腸と同じように人の皮膚の表面にも、常在菌として様々な菌が生息しています。これらの菌の中には良い働きをする菌(善玉菌)もいれば、悪い働きをする菌(悪玉菌)もいます。
代表的な善玉菌は『表皮ブドウ球菌(白色ブドウ球菌、または「コアグラーゼ陰性ブドウ球菌属」とも呼ばれる)』で、代表的な悪玉菌は『黄色ブドウ球菌』です。黄色ブドウ球菌は食中毒の源になることでも有名です。
表皮ブドウ球菌は肌を弱酸性に保ち、悪玉菌が繁殖したり皮膚の内部に侵入しないように肌の健康を保っています。
肌の常在菌は毛穴から分泌される汗や皮脂の成分をエサにしており、食べた皮脂を様々な物質へと分解します。
善玉菌は皮脂を脂肪酸やグリセリンといった物質に分解して肌を弱酸性に保ちます。悪玉菌は肌にかゆみや炎症を起こさせたり、悪臭を放つ脂肪酸やインドールやアンモニア等の物質に分解します。もうおわかりでしょうが、悪玉菌が増殖すると加齢臭のもととなるノネナールも増加しやすくなるのです。
悪玉菌と善玉菌は皮膚上で常に互いに勢力争いをしているため、善玉菌が減ると悪玉菌が増え、悪玉菌が減ると善玉菌が増えます。つまり、善玉菌が減ると加齢臭が悪化する原因となってしまうのです。
皮膚の善玉菌が減ってしまう原因は、洗顔、体の洗い方が間違っているか、シャンプーやボディソープが合っていない場合に起こりやすくなります。
▼間違った体の洗い方
多くの人が、特に男性は頭や顔、体を強く洗いすぎです。
ゴシゴシ強く洗うと爽快感を得ることはできますが、肌を強く洗いすぎると、皮脂を必要以上に落としてしまい、また、肌の常在菌も一緒にこすり落としてしまうため、洗ったあとに肌のバリア機能が失われてしまって、皮脂が返って過剰に分泌される原因になったり、悪玉菌が増殖しやすい環境になってしまう恐れがあります。
肌はできるだけこすらないように、優しく泡で包むように洗うのが理想的です。
▼弱酸性とアルカリ性
シャンプーやボディソープには、弱酸性のものとアルカリ性のものがあります。肌と同じ弱酸性の製品は肌に刺激が少ないため、肌には優しいのですがその分洗浄力が弱く、皮脂が詰まりやすい傾向にあります。弱酸性の製品は敏感肌の人向けと言われています。
アルカリ性は毛穴を開いて汚れを落としやすいが刺激が強いため、皮脂やアルカリ性が苦手な表皮ブドウ球菌を落としすぎるという難点があります。
▼肌の乾燥
皮脂や汗が極端に少なく、肌が乾燥した状態になると、表皮ブドウ球菌など善玉菌が活動しにくくなり、肌を弱酸性に保つことができなくなって、黄色ブドウ球菌など悪玉菌が増えて、肌の炎症を起こしたり悪臭の原因になる。
▼スクラブ入りの洗顔フォーム
スクラブ入りの洗顔フォームなどを使うと、肌表面の菌だけでなく、成長前の細胞などが剥がれ落ちてしまうため、洗ったあとに肌が余計に乾燥してしまい、善玉菌が繁殖しにくくなり、悪玉菌が増えてしまう可能性があります。
▼運動不足
日頃、運動せず汗をかく習慣がないと汗腺の機能が低下して汗をかきにくくなります。
通常、汗の成分は99%が水分でサラサラしていますが、汗をかきにくくなると水分量が減ってネバネバした、ミネラルを多く含んだ汗になり、pHもアルカリ性に傾きやすくなります。アルカリ性が好きな黄色ブドウ球菌など悪玉菌が増殖しやすくなると加齢臭が悪化しやすくなります。
▼防腐剤
肌を乾燥から守る化粧水や保湿クリームの中には、防腐剤入りのものがあります。防腐剤は肌の善玉常在菌も減らしてしまうため、できるだけ防腐剤が入っていない化粧品を選びましょう。
参考:『加齢臭を抑える入浴の仕方』
腸内環境の悪化
歳を取ることで加齢臭が悪化する原因の一つとして、同じく加齢によって起こる腸内環境の悪化が考えられます。
人の腸内には善玉菌や悪玉菌など様々な最近が生息しており、その数は100兆匹とも言われています。腸内細菌のうち、ビフィズス菌などの善玉菌は加齢によって減少しやすく、代わりに悪玉菌が増殖しやすくなります。
腸内環境が悪化すると、腸に消化しきれなかった肉などの食べ物のカスが溜まって腐敗して悪臭の原因となるインドールやアンモニアのガスを発生させます。悪臭のガスは、腸壁から吸収されると血液中を通って全身をめぐり、それが口から出ると口臭の悪化に繋がったり、汗と一緒に排出されれば体臭悪化の原因となってしまうのです。加齢臭と、腸の腐敗によって発生したガスが混じってニオイを放つことで、よりひどい加齢臭を発することになります。
また、胃や腸で分解された栄養素は腸壁から吸収されていますが、腸内環境が悪化していると、腸壁から栄養素が吸収されにくくなり、加齢臭の発生を抑えてくれるビタミンCのような栄養素が体内に十分に届きにくくなってしまい、活性酸素が体内に増えやすくなってしまうことあり、これも加齢臭悪化の原因として挙げられます。
衣服に残留した皮脂汚れ
加齢臭の原因であるノネナールは、着ている衣服にも付着します。ただ、ノネナールそのものは水溶性で洗濯をすれば落とすことができます。
洗濯で注意しなくてはならないのはノネナールではなく、『皮脂汚れ』が残留することです。皮脂は油ですから水に溶けにくく、衣服の繊維に絡まると選択しても中々落ちません。この皮脂汚れが残っていると、その皮脂が新たなノネナールを生み出して、加齢臭を悪化させてしまうのです。
しかも、間違った洗濯の仕方をしていて、皮脂汚れが落としきれていない場合は、毎回服を着る度に皮脂汚れが蓄積していきますから、加齢臭の悪化は相当ひどいことになります。
実際、加齢臭に限らず、体臭の発生源になっているのは、皮膚そのものではなく、皮膚から分泌された汗や皮脂がついた衣服である場合が多いため、加齢臭の対策も、衣服の洗濯の仕方を適切に行うことが重要であるといえます。