めまいや立ちくらみを起こす『起立性調節障害』と、副腎のオーバーワークによって副腎からホルモンが出なくなった状態を示す『副腎疲労』は、症状が非常に似ています。二つの病気の特徴や原因などをご紹介します。
起立性調節障害とは
起立性調節障害は、思春期の肉体の未成熟、様々なストレス、生活習慣の乱れ、食生活、その他様々な要因が重なることで、自律神経系の働きが乱れ、それによって起こる自律神経失調症の症状のうちの一つです。
つまり大きな流れで言うと、まず生活の乱れや身体的な問題によって自律神経系の乱れが起こり、それで自律神経失調症が起こるということ。そして自律神経失調症のうちの一つの症状として、起立時の立ちくらみ、めまい、午前中の低血圧などの諸症状が起こっているということです。
自律神経系の乱れが別の形で現れれば、起立性調節障害ではないということになります。例えば、うつ病のような精神疾患も、自律神経系の乱れが原因で起こることがあります。
自律神経系の働きが乱れる典型例
自律神経系の乱れは、自律神経系を支える交感神経系と副交感神経系のそれぞれの働きにも影響を及ぼします。自律神経系の働きが乱れる最大の要因は、ストレスです。
ストレスは以下のような流れで交感神経系を弱体化させます。
- 脳や体がストレスを受ける
- ストレスに対抗するため、交感神経系が興奮し、ストレスホルモンが分泌される
- ストレスが続く
- 交感神経系は興奮し続け、ストレスホルモンも分泌され続ける
- ストレスが続く
- 交感神経系が疲弊する、また、ストレスホルモンの材料が不足する
- ストレスが続く
- 交感神経系が興奮しなくなり、自律神経系の働きが乱れて元に戻らなくなる。
- 自律神経系の乱れから、自律神経失調症を起こす。起立性調節障害の症状が現れる
※短期間で強いストレス(例えば交通事故や災害体験などを)を受けると、一気に「9」の状態になることがあります。
ストレスに対抗するために分泌されているストレスホルモンとは、コルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンと言った物質です。また、それらのストレスホルモンを生合成しているのが副腎であり、ストレスによって交感神経系が弱体化したとき、同時に副腎も疲弊しており、まさに『副腎疲労』が起こっているのです。
副腎疲労とは
副腎はコルチゾールに代表される、ストレスホルモンを生合成する臓器です。過度のストレスや、長く続くストレスは、副腎を疲弊させて、副腎疲労という症状を起こします。
副腎疲労とは、ストレスや過労によって副腎からストレスホルモンが分泌され続けることで、副腎そのものが過労状態になり、機能低下を起こしてしまう状態です。
副腎疲労になると、疲れやすい、疲れが取れない、立ちくらみ、朝起きられない、低血圧、低体温、など起立性調節障害とほとんど同じような症状が起こります。
また、副腎疲労を起こすような状態は、過度のストレスが起因している場合が多いため、同時にうつ病のような精神症状を起こしやすくなります。認知症の発症リスクも増加します。
起立性調節障害と副腎疲労の関係
起立性調節障害と副腎疲労では、非常に似通った症状が起こりますが、これらの病気は同じものではありません。しかし、二つの病気が起こる大元を辿って行くと、ストレスや過労と言った、肉体的、精神的な負荷が自律神経系の働きに影響を与えていることが分かります。
また、副腎は体をストレスから守るためのストレスホルモンを生合成する重要な臓器であり、副腎の機能が低下した状態は、起立性調節障害だけでなく、うつ病や慢性疲労症候群など、様々な病気や症状が現れる状態であるといえます。
つまり、「起立性調節障害=副腎疲労」というよりも「起立性調節障害 < 副腎疲労」であり、副腎疲労が起こるような状態に至った結果として、起立性調節障害も起こってしまうことがある、と言えます。
このことから、起立性調節障害の症状を治療したり改善したりするには、その根本にある自律神経系の乱れや副腎疲労の改善、さらには、それらの原因となっているストレスを取り除くことなどが課題として考えられます。
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