近年、大人だけでなく、子どもの睡眠不足が年々増えていると言われています。睡眠不足は、自律神経系の働きを乱す大きな原因です。小さな頃から睡眠が不足した状態で育った子どもたちは起立性調節障害を起こしやすくなります。

子どもの睡眠不足が増えた背景

乳幼児期の睡眠習慣の多様化
近年は乳幼児の頃から生活リズムが不規則になったり深夜化し、小さい頃から睡眠不足を起こしやすい環境が増えたことが、子どもの睡眠不足が習慣化してしまう原因の一つであると考えられます。

小学校以後の生活
学校に通い始めると、塾や習い事が忙しいため食事は疎かになり、成長に必要な栄養が不足しがちで、帰宅も遅くなって就寝時間も遅くなりがちです。

また、遊びも外で遊ぶよりもゲーム機やスマホが中心で、運動不足で筋肉が付きにくく、痩せ型の体型になりやすいのです。起立性調節障害を起こす子どもの8割以上が、平均的な体重かそれ以下の痩せ型の体型です。

大人の影響も
大人の睡眠時間も以前よりも減少しています。親が寝るのが遅いため、その子どもも親と一緒に夜更かしすると言った生活スタイルが定着化しやすいことが考えられます。

また、女性の社会進出が増えたことや、離婚件数が増えてシングルマザー家庭が増えたことも一因とも考えられます。フルタイムで母親が働いている家庭では、パートタイムや専業主婦の家庭に比べると、夕食の時間がどうしても遅くなりやすく、就寝時間もその分遅くなりがちです。

電子機器の普及
スマホ、ゲーム機など個人で使用出来る電子機器の普及で、夜遅くまでゲームやインターネットに熱中する子どもが増えて、就寝時間が遅くなった。また電子端末から照射されるブルーライトには覚醒効果があり、睡眠を妨げる働きをする。

睡眠不足は自律神経系を乱す

そもそも、睡眠不足が起立性調節障害を引き起こす原因はと言うと、睡眠不足で自律神経系の働きが乱れるためです。

睡眠が不足すると、ストレスが溜まりやすくなり、また血圧が上がるなどして交感神経系に負担がかかります。こうしたストレスや交感神経系の負担が長く続くと、自律神経系の働きは次第に乱れていき、終いには乱れきって元に戻らない状態にまでなってしまうことがあります。これは子どもに限ったことでなく、大人でも起こります。

こうして自律神経系の働きが乱れた状態が、起立性調節障害を引き起こす原因になります。

大人になっても起立性調節障害が治りにくい

起立性調節障害は思春期に起こりやすく、成人を迎える頃には軽くなったり解消することが多いのですが、子供の頃からの睡眠不足が習慣化した人の場合、成人後も引き続き起立性調節障害の症状が強く残る割合が多く、社会への参加が困難になって、これが引きこもりなどの原因にもなります。

大人になっても起立性調節障害が解消しにくいのは、子どもの頃から慢性的に自律神経系が乱れてしまっているためだと考えられます。

精神への影響も

自律神経系の乱れは、セロトニンノルアドレナリンなど、精神の安定に欠かせない神経伝達物質の不足や枯渇も招き、精神状態にも強く影響が出るため、睡眠不足から起立性調節障害を発症した人の多くは、精神状態も悪く、うつ病などを併発しているケースもあります。

睡眠不足は他にも様々な悪影響を引き起こす

睡眠不足によって引き起こされる悪影響は、自律神経系の乱れや起立性調節障害だけではありません。

睡眠不足の症状例
集中力や判断力の低下
意欲ややる気の低下
運動神経や知能の発達が遅れやすい
アレルギーを起こしやすい
性的成熟が早まり、体の成長が遅れやすい
抑うつ、情緒不安定になりやすい

詳しくは『睡眠不足の子どもに起こる悪影響』をご覧ください。

幼少期からの正しい生活習慣の形成が重要

睡眠不足による起立性調節障害の発症を防ぐには、睡眠習慣だけでなく、食事、運動など、生活全般の習慣を小さな頃から規則正しく健全に形成する訓練が非常に重要です。

人間の体内時計は幼少期に形成されるため、子どもの頃の不規則な生活習慣は、成長した後の生活にも影響を与えてしまう可能性があります。

生活スタイルが多様化した現代社会では、睡眠が疎かされがちですが、睡眠の重要性を理解することが、起立性調節障害を予防することにも、また、症状を改善する手がかりにもなるはずです。

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