脳内のオキシトシンの分泌を増やすと、対人コミュニーケーション能力が高まることがわかり、自閉症スペクトラムの症状を改善するという研究結果が出て以来、コミュ障を改善する効果がオキシトシンに期待されるようになりました。オキシトシンのサプリやその他製品に関する情報をご紹介します。
目次
オキシトシンの対人コミュニケーション効果
オキシトシンは、家族や恋人、親しい友人などとの間で分泌が促進されるホルモンです。親しい間柄であればあるほどオキシトシンの分泌は促進され、相手に対する信頼性を向上させる効果と、そうした相手とのコミュニケーションを円滑化する効果があるとされています。
コミュ障の改善効果
現時点で、私たち一般人が、オキシトシンにもっとも期待する効果は、一言で言うと『コミュ障の改善』です。
自閉症スペクトラム以外でも、コミュニケーションが苦手な発達障害の人も多く存在します。さらに、発達障害とは判定されなくとも、人とのコミュニケーションが苦手だったり、強い不安を感じる人も世の中に多く、人とのコミュニケーションが億劫であるために、引きこもりやニート化する人、いわゆる『コミュ障』の人も増えています。
人とのコミュニケーションが苦手な人々にとって、オキシトシンを増やすことは、苦手な対人コミュニケーションを改善したり克服する手段やきっかけになる可能性があると言うことで期待が集まっています。
オキシトシンのサプリメントは無い
では、「オキシトシンのサプリメント」というのは存在するのでしょうか?
オキシトシンは、9つのアミノ酸が合体したペプチドホルモンです。オキシトシンは哺乳類の体内に存在するホルモンなので、オキシトシンを有する、哺乳類の食用肉(豚や牛、羊など)を食べることで、体内にオキシトシンが取り込まれます。
しかし、残念なことに、口から食べたオキシトシンは、胃や腸などで分解されてしまうため、そのまま食べても脳や血液中に届くことはありません。従って、オキシトシンのサプリメントと言うものは今のところ販売されていません。
また、オキシトシンのサプリメントと言うものが仮にあったとしても、前述の理由から、経口摂取では血中や脳内のオキシトシンを増やす効果は期待できないのです。
尚、医療用ではオキシトシンが陣痛促進剤として注射で使用されることがありますが、これは専門医の判断のもとで使用される医薬品です。また、こうした医療用で利用される成分を摂取することは、重篤な副作用を起こす可能性があるため、医療目的以外の使用には慎重になるべきです。
オキシトシンの香水
サプリがダメなら、他の商品はどうか?ということで、次に「オキシトシンの香水」についてご紹介します。
オキシトシンは愛情ホルモンとか、他人とのコミュニケーションを円滑化する効果がスポットライトを浴びたことで、オキシトシン入りの香水をいわゆる『フェロモン』や『媚薬』的に扱う、雑誌の裏側に良くあるような怪しげな商品も販売されていることがあります。
▼他人にまで効果があるはずがない
仮に、オキシトシン入りの香水を付けることで、急にモテるようになったり知らない相手からいきなり惚れられたりすると感じたとしても、それはオキシトシンが相手に対して媚薬的に働いたわけではありません。
香水程度の濃度で、他人にまで影響をおよぼすような製品があったとしたら、ある意味で危険すぎます。オキシトシン入りと謳われている香水の効果は、通常の香水の効果として、良い香りによる好感度のアップ(逆効果も)、リラックス効果(逆効果も)以外の効果は、期待できないでしょう。
万が一、こうした香水にプラセボ以外の効果があるとしたら、オキシトシンの香水を付けたことで、それが他人でなく自分に対して作用して、対人コミュニケーション能力が向上したり、行動に自信が出た結果、ということになりそうです。
ところで、オキシトシンの分泌が促進されると、他人を無条件に信頼してしまうために、相手を盲信して損得勘定を考えずに投資してしまったり、金銭詐欺に会いやすくなるという研究結果もあります。
香水に本当にオキシトシンを増やす効果があるとしたら、他人からモテることだけでなく、他人に騙されやすくなるリスクも増えることを覚悟しなくてはならないでしょう。
オキシトシンの点鼻薬
オキシトシンのサプリメントは存在せず、オキシトシン入りの香水には、期待するような効果は恐らくありません。となると、オキシトシンを外部から取り入れることが期待できる方法は、点鼻薬ということになります。
自閉症スペクトラムの症状を改善したと発表された研究で実際に使用されたオキシトシンも、点鼻スプレーによるものです。
しかし、これも専門家による高度かつ綿密な管理の元、使用量や用法などを厳密に特定して行われた研究ですから、一般の素人が個人で適当に使うには、リスクが高すぎると言えますから、通販や個人輸入で海外の商品を購入することも控えるべきです。
オキシトシンの舌下スプレーというのもあるようですが、これも同様の理由から、安易な使用は控えるべきです。
オキシトシンの研究の広がりに期待
現時点では、オキシトシンを人工的に摂取しようという試みは、安全性が担保されていないため、いかなる商品であっても全くお勧めが出来ません。
一方で、何らかの原因で脳内のオキシトシンの分泌量が減少していると考えられている、コミュニケーション能力に難がある人や、人とのつながりに苦労している人、社会での生き辛さを感じている人が多いことも事実です。
自閉症スペクトラムの改善など、一部の研究では注目すべき成果も発表されていますから、オキシトシンの製品化は、今後の研究の広がりを期待しながら待つことが良さそうです。
直近では、浜松医科大学の山末英典教授を中心とした研究チームが、新たにオキシトシンの点鼻スプレーの新薬の臨床試験を開始し、5年程度で製品化を目指すというニュース(2018.3.7 – 読売新聞より)がありましたので、是非期待したいところです。
サプリに頼らずオキシトシンを増やすには
今回ご紹介した通り、経口摂取のサプリメントではオキシトシンを増やすことはできませんから、どうしてもオキシトシンを増やしたければ、サプリ以外の方法でオキシトシンを増やすことを考えていかなくてはなりません。
オキシトシンは、親密な仲の人との会話やふれあい、スキンシップ、様々なコミュニケーションをとることで、脳内での分泌が促進される物質ですので、オキシトシンを増やすにはコミュニケーションをとることを心がけてください。
詳しくは『オキシトシンの増やし方』をご覧ください。
★次のページでは『オキシトシンは人類を救うかも』をご紹介します。
photo credit: lorenkerns Susanna and Kris (license)