昼寝には、ストレス解消や疲労回復などの効果があります。忙しくストレスに満ちた社会で暮らす現代人は睡眠不足がちで、慢性的に睡眠不足の場合、寿命にさえ影響が生じるといいます。睡眠不足による悪影響を補い、効果的にストレスや疲労をリフレッシュするためにも、昼寝の活用方法や効果などをご紹介します。

昼寝とは

昼寝とは、昼間に短時間の睡眠を取ることで、午睡(ごすい)とも言われます。

一般的に昼食後に昼寝をとることが多く、海外では赤道に近くて暑い国や、ヨーロッパを中心に、『二相睡眠』(昼寝+夜寝)という古くから昼寝の文化がライフスタイルとして根付いており、特にスペインやギリシャなど地中海沿岸の国々のシエスタ(午後1時~4時の暑い時間を休憩時間にする)というお昼寝文化が有名です。
(ただし、シエスタは経済活動上は問題視されている)

一説に、人間は人工の光がない状態では、半概日リズム(サーカセミディアンリズム、約12時間毎の体内時計)の働きにより、自然と二相睡眠になるとも言われています。

昔の日本でも、農家などで昼寝をする習慣があったそうですし、子供の頃は保育園や幼稚園で「お昼寝の時間」がありますが、現代の大人の社会には昼寝をとる文化はありません。そもそも昼寝をする時間もありません。

忙しい現代社会では、昼間に寝ること自体が「怠けている」とみなされる傾向があります。しかしこれは、昔の部活動などで「水を飲んではいけない」と根性論を言われていたのと同じ、根拠の無い、悪しき慣習と言わざるを得ません。

日本では、スペインのシエスタのように何時間も昼休憩を取ることは出来ませんが、数十分程度の短時間でも、昼寝には優れた効果がありますので、昼寝はどんどん取り入れるべきです。

昼寝に最適な時間

昼寝に最適な時間は以下のとおりです。ページの内容に目を通す時間のない人は、以下の2点だけ守って下さい。

いつ?
13時~15時の間。
それ以降は夜の睡眠の質が悪くなるのでNG。
どのくらい?
10~20分程度。
(入眠までの時間除く)
長くても30分以内にするのが最適だとされています。

30分以上の昼寝は、徐波睡眠というノンレム睡眠に入って熟睡状態になってしまい睡眠慣性が現れやすくなり、寝起きが悪くなってしまったり、起きた後もボーっとしてしまい、午後の仕事や勉強に影響が出る場合があります。

また、成人の場合、昼間に徐波睡眠が現れるような長時間の睡眠を取ると、睡眠欲求が解消されてしまうため、夜の睡眠の必要性が下がり、夜の睡眠が浅くなってしまう可能性があるので避けたほうが良いとされています。

昼寝と成長ホルモン

昼寝で効率よく成長ホルモンを分泌させるには、『30分以上という比較的長時間の昼寝で、かつ深い睡眠』が必要となります。ただし、30分以上の昼寝は、先に紹介した通り、睡眠慣性が現れて午後の仕事に影響が生じたり、徐波睡眠の発生によって夜の睡眠が浅くなるなど、睡眠の質に悪影響を与える場合があります。

長時間昼寝をしてしまうと、逆に、成長ホルモンの総分泌量が減少する可能性もあるため、ダイエットや脂肪燃焼、アンチエイジングや筋肉増強などの効果を狙って、昼寝で成長ホルモンの分泌を増やしたいと目論む人に取っては、逆効果になる可能性があります。

肉体労働者やアスリート、ボディビルダー、軍人のように肉体を酷使するハードワーカーや特殊な職業の人以外の場合は、成長ホルモンが分泌するような昼寝の仕方は安易に取り入れないほうが良いでしょう。

詳しくは『昼寝で成長ホルモンは分泌されるか』をご覧ください。

正しい昼寝の仕方

貴重な昼休みに、出来るだけ効率的に昼寝を取るためのポイントをご紹介します。

  • タオルなどを頭にかけて視界を暗くすると効果アップ
  • コーヒーやお茶でカフェインを取って、目覚めやすくする
  • ソファーや机の上でもOK
  • 寝過ぎや深い眠りを避けるため、座ったまま寝る
  • 携帯やスマホのアラームを30分以内でセットする
  • 水分不足は睡眠効果が半減するので、水分はしっかり補給する
  • お昼寝グッズ(アイマスク、耳栓、昼寝用枕など)を揃えると効果アップ

★昼寝の姿勢
最適な昼寝の姿勢は、リクライニング式の椅子に座り、背もたれを60度程度にリクライニングさせた状態です。(ベッドなどで完全に横になると、深い眠りに入りやすくなるため)

リクライニング椅子がない場合は、普通の椅子に座って、首枕などを使って頭を固定するとよいでしょう。デスクやテーブルにうつ伏せて寝る場合は、腕や胸を圧迫して血流を悪くしないよう、クッションなどを敷くと良いです。

職場では昼寝しにくい?

マジメな気質の人が多い日本人の社会では、昼寝はサボっていると思われる傾向が根強いようです。ただでさえ、睡眠不足の人が多い日本人ですが、たとえ夜の睡眠時間が十分とれている人でも、午後を過ぎると眠たくなり、ぼーっとしてしまって集中力が落ち、仕事に手がつかなくなるような経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

じつは、体をあまり動かさないデスクワークであっても、脳は想像以上に疲労しているものです。

昼寝には、午前中の疲れやストレスをリセットし、午後の眠気を予防して集中力をアップする効果があります。たった15分ほど眠るだけで、その後の数時間の集中力を取り戻すことが出来るのですから、『作業効率』という面からも、昼寝を一概に悪者扱いすることは決して出来ないはずです。

昼寝の効果が認知され始めたせいか、最近は職場に昼寝用のスペースを設ける企業も少しずつ増えているようです。また、職場では昼寝が出来ない人でも、町中には短時間の過眠スペースを提供する、「お昼寝カフェ」なるサービスもチラホラと見かけるようになりましたので、探して試してみてはいかがでしょうか。

昼寝ぐらいは気兼ね無くゆっくりできる、ゆとりある社会になると良いですね。

★次のページでは『昼寝の効果と種類』をご紹介します。