グルタミン酸(Glu,E)は、アミノ酸の一種で、小麦グルテンの分解物質から発見されて命名されました。 英語ではグルタメートとも呼ばれます。
アミノ酸として広く食品に含まれているほか、体内では神経伝達物質としても作用しており、最近ではうつ病など精神疾患への関連も指摘されています。

旨味成分としてのグルタミン酸

グルタミン酸は、海藻類、チーズ、きのこ類、イワシ、トマトや白菜、その他ほとんどの食品に広くに含まれている平凡なアミノ酸の一種で、旨味成分として知られ、日本では調味料『味の素』の原料の一つとしても使用されています。
旨味成分としてのアミノ酸は、単独で使用するよりも掛け合わせることで相乗効果が期待出来るため、複数の食材に含まれるアミノ酸の掛け合わせや、食品の成熟によって、より深い旨味を感じることが出来ます。

最近流行の『熟成肉』も、食材の旨味に着目したもので、肉を特別な方法で長期熟成することでグルタミン酸のような旨味成分を増しす事で、より美味しく食べれるというものです。

神経伝達物質としてのグルタミン酸

旨味成分として需要がある一方で、体内の神経においては、神経伝達物質の一つとしての作用があり、記憶や学習などの脳の重要な機能でも働きがあります。
さらに、内因性(体内で作られた)の興奮毒としての性質があり、脳内のニューロン周囲でグルタミン酸の濃度が一定値以上高まると、神経細胞を壊死させる事が知られており、グルタミン酸の持つ興奮毒性がパーキンソン病やうつ病などの神経症に関与があると考えられています。

グルタミン酸の興奮毒としての作用は、通常、脳内のマグネシウムイオンがグルタミン酸の毒性をブロックしているますが、何らかの影響でマグネシウムイオンが欠乏したり、マグネシウムイオンと拮抗してイオンポンプ作用を生み出しているカルシウムイオンが増加することでイオンバランスが崩れると、グルタミン酸の毒性を抑制することが出来なくなり、NMDA型グルタミン酸受容体が活性化されて、うつ病などを引き起こしているという仮説(グルタミン酸仮説)があります。

ただ、必須アミノ酸トリプトファンの代謝物であるキヌレン酸は脊髄のNMDA型グルタミン酸受容体でグルタミン酸の作用に拮抗する働きがあることがわかり、グルタミン酸の持つ興奮毒を抑制し打ち消していることが推測されるため、こうしたうつ病発症のプロセスは、特定原因によるものと言うよりは、連鎖的な側面があると考えられます。

食品や調味料に含まれるグルタミン酸の健康への影響

こうした毒性から、グルタミン酸ナトリウムなどを含む調味料を摂取することで健康への影響があることが心配されますが、グルタミン酸は血液脳関門は通過しないため、食品などから摂取しても血液から脳へは直接供給されることはないため、健康への影響は無い、と考えられています。
また、脳内で神経伝達物質として働いているグルタミン酸は、脳内のグルコースから脳内で独自に生合成されたものです。

グルタミン酸と血糖値

最近の研究では、グルタミン酸は血糖値への関わりがあることもわかってきました。
血糖値が上がってすい臓でインスリンが分泌される際、グルタミン酸がインスリンの分泌を促進する作用があり、これまでの糖尿病治療薬では効果が無かった糖尿病患者への新薬開発への期待も高まります。

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