お酒は、中年男性の敵である加齢臭を悪化させてしまう原因でもあります。お酒を分解する時には大量の活性酸素が発生しますし、お酒によって睡眠の質などが低下することも、加齢臭悪化の原因となるのです。
目次
アルコールを分解する過程で活性酸素が発生する
アルコールは肝臓の酵素によって分解されます。アルコールを分解する酵素は、ADH(アルコール脱水酵素)とMEOS(ミクロゾームエタノール酸化系酵素)です。通常、ADHが主としてアルコールを分解しますが、ADHだけではアルコールが分解しきれない場合、MEOSもアルコールの分解を行います。
加齢臭が発生する原因は、パルミトレイン酸という脂肪酸が酸化することで発生するノネナールという物質ですが、ノネナールが発生する過程で起こる脂肪酸の酸化には、体内で発生する活性酸素の多寡が関わっています。つまり、活性酸素が多ければ多いほど、体は酸化しやすくなり、加齢臭も発生しやすくなるのです。
アルコールは人体には有害な物質であり、有害なアルコールを分解して無毒化する過程で、活性酸素が発生します。
MEOSという酵素で活性酸素が増加
お酒を毎日飲み続けると、お酒に対する耐性ができて酒に強くなる(酔いにくくなる)ことが知られていますが、その原因となるのがこのMEOSという酵素の働きです。毎晩のように連続して飲酒をすることでMEOSの働きは活性化され、お酒を分解できる量が増えるため、お酒に酔いにくくなります。また、MEOSはお酒以外にも薬への耐性を作って薬効を下げる作用があります。
飲酒習慣によりMEOSが活性化した状態が続くと、MEOSにより肝臓内で活性酸素が大量に発生することが明らかになっており、これが体の様々な部位で細胞を傷つけたり変質させてしまう原因となり、加齢臭が悪化する原因にもなってしまうことが考えられます。
- 飲酒→MEOS増加→活性酸素増加→加齢臭悪化
アセトアルデヒドで活性酸素が増加
アルコールがADHやMEOSによって分解されると、アセトアルデヒドという物質が生じます。このアセトアルデヒドは、人体に有害な物質で、タバコにも含まれていたり、二日酔いの原因にもなる物質であることが知られています。
参考:『タバコで加齢臭が悪化する』,『二日酔いの原因となるアセトアルデヒドとは』
有毒な物質であるアセトアルデヒドを分解する過程で活性酸素が発生し、これが体内の細胞を酸化させて、加齢臭の悪化につながってしまいます。
また、アセトアルデヒドは、加齢臭の原因物質である『ノネナール』と同じ、「アルデヒド」の一種であり、独特な臭気と刺激臭を放つ物質です。血中に放出されたアルデヒドは汗などとともに皮膚から漏れ出して、それ自体が体臭を悪化させる原因にもなりますし、それが加齢臭のニオイと混じることで、さらに体臭が悪化してしまうこともあります。
- 飲酒→アセトアルデヒド発生→活性酸素増加→加齢臭悪化
肝機能の低下で脂肪酸の増加
長期的にお酒を飲み続けると、肝臓の機能が低下していくことが知られています。肝機能が低下すると、肝臓による脂肪酸の代謝機能も低下するため、肝臓では脂肪が蓄積しやすくなり、「脂肪肝」になりやすくなります。
肝機能が低下することで血中のコレステロール濃度も上昇し、血中から皮脂へと分泌される皮脂の量も増えて、加齢臭のもととなるノネナールや過酸化脂質が増加してしまう原因となります。
- 飲酒→肝機能低下→皮脂増加→ノネナール増加→加齢臭悪化
飲酒で睡眠の質が低下
一般的にお酒を飲むとよく眠れると思われがちですが、飲酒は睡眠の質を低下させてしまう場合があります。
お酒を飲んだ直後は、脳が酩酊状態になり、強い眠気を催すことがあり、このお陰で寝付きがよくなったように感じますが、これは眠っていると言うよりは、アルコールの作用で脳が気絶したのに近い状態です。
アルコールを分解する過程で生じるアセトアルデヒドは、脳を覚醒させる作用があり、入眠後数時間で中途覚醒してしまったり、深い眠りに就くことができにくくなり、睡眠の質が悪化してしまうのです。
毎日の飲酒により日常的にこうした睡眠の質が低下した状態が続くと、睡眠不足によってストレスが溜まりやすくなったり、睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されにくくなることで、体の抗酸化作用が低下して、体内で活性酸素が増加しやすくなって、加齢臭が悪化しやすくなってしまうのです。
特に、眠るためにお酒を飲む人は要注意です。お酒は飲み続けることで耐性が生まれて、最初は1杯で寝付けていたのに、次第に2杯、3杯と飲んでも眠れなくなってしまいます。
酒量が増えれば、その分発生する活性酸素やアセトアルデヒドの量も増えていくため、徐々に加齢臭が悪化しやすい体質へと変わっていってしまう恐れがあります。
- 飲酒→睡眠の質低下→ストレスがたまりやすくなる→活性酸素増加
- 飲酒→睡眠の質低下→メラトニン減少→抗酸化作用低下→活性酸素増加
飲酒による加齢臭の悪化を防ぐには
飲酒による加齢臭の悪化を防ぐには、最も良いのはもちろん飲酒を控えることですが、この世知辛い世の中ではお酒くらいは自由に飲みたい、と思うものです。お酒をたしなみつつ、できるだけ加齢臭の悪化を防ぐ方法をご紹介します。
休肝日を作る
よく言われることですが、休肝日は重要です。毎日飲酒をして肝臓を酷使すれば、その分肝機能の低下が激しくなりますし、活性酸素を増やすMEOSも連続して飲酒をすることでどんどん活性化されていきます。飲酒を毎日続ければ続けるほど肝機能の低下とMEOSの活性化によって加齢臭は発生しやすくなるため、休肝日を作ってリセットする必要があります。
抗酸化物質を取る
お酒を飲んで加齢臭が悪化してしまう原因の一つは、飲酒によって加齢臭の原因である活性酸素が体内に大量に発生してしまうことです。活性酸素の発生を防ぐこと、もしくは減らすことが出来れば、飲酒による加齢臭の悪化を防ぐことにもつながります。
お酒を飲みつつ加齢臭の発生を防ぐのに有効な方法が、抗酸化物質を摂取することです。抗酸化物質はビタミンやホルモン、酵素など様々な種類があり、体内で活性酸素が増えすぎないように働く物質です。これらの抗酸化物質を積極的に摂取することで、飲酒によって活性酸素が増加するのを抑制することができます。
▼ワインのポリフェノール
ぶどうの皮に豊富に含まれるポリフェノールには、高い抗酸化作用があることが知られています。ぶどうの皮も含まれている「赤ワイン」にはポリフェノールも豊富に含まれていますから、同じ量のビールや焼酎を飲むよりも、赤ワインなら抗酸化物質を補給しながらお酒を楽しむことができます。
▼酒のつまみ
お酒のツマミにも一工夫すると良いでしょう。ウイスキーなどと相性が良いチョコレートには豊富にポリフェノールが含まれています。特に高純度カカオのチョコには濃密なポリフェノールが含有されていますから、高カカオのチョコを選ぶと良いでしょう。
抗酸化物質はこの他にも様々な種類がありますから、好みに合わせてお酒のつまみなども工夫してみると良いでしょう。また、お酒のつまみとしてだけでなく、日頃の食事においても積極的に抗酸化物質を摂取することで、活性酸素が発生しにくい体質づくりをすることも、加齢臭の予防につながりますので、ぜひ日々の抗酸化物質の摂取をこころがけて頂ければと思います。
参考:
『加齢臭を予防するための食事とは』
『加齢臭対策に重要な抗酸化物質とは』