不眠症とは、人間の体に本来自然に備わっている生体メカニズムが何らかの原因で損なわれたり働きにくくなってしまい、「眠りが浅い」 「熟睡できない」「睡眠時間が短い」「眠りたくても眠れない」「昼間耐え難い眠りが襲う」などの睡眠障害の症状が慢性的になり、心身に不調が生じる、睡眠障害の一種です。
不眠症とは
人の睡眠は、主に以下の二つの人体メカニズムによりコントロールされておる、 これらのメカニズムが何らかの原因でうまく働かなくなると、不眠症になる可能性があります。
1.体内時計
夜になると眠くなり、朝になると目が覚める、という自然なリズムを人は生まれながら持っている。
2.恒常性維持機構(ホメオスタシス)
人体を常に一定の状態で維持しようとする働きのこと。
長く起きていると眠気が強くなる、睡眠時に深い眠りが多くなる等。
→詳しくは「睡眠メカニズム」
現代の日本では、『5人に1人が睡眠に関する問題を抱えている』とも言われるほど多くの人が、何らかの睡眠トラブルに悩まされています。
疾病としての不眠症かどうかの判断は、単に睡眠時間が短いという事だけでなく、寝起き後の心身の不調(倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振など)の有無、日常生活へ支障を来たす程度具合、眠りの質や満足度によって診断されます。
総じて睡眠時間の長短にかかわらず、「眠りに対する不満」とともに「心身の不調」が特徴で、短い睡眠でも満足を得れる人(ショートスリーパー)や10時間以上寝ても不満が残る人がいるように、症状や原因の個人差が非常に大きな疾病です。
不眠症の種類
不眠症の種類は大きく分けて以下の4つに分類されます。
- 1.入眠障害
- ベッドに入っても寝付きが悪い、中々眠れない、などの症状で、眠りにつくまでに30分~1時間以上かかる場合がこの症状に分類されます。
- 2.中途覚醒
- 眠りについてから、起床する間までに、何度も目が覚めるような症状です。比較的高齢者によく見られる症状です。
- 3.早朝覚醒
- 起床予定の時間よりもかなり早く目覚めてしまい、その後再び眠る事が出来ないような症状です。
- 4.熟眠障害
- 睡眠の質に関わりがある症状で、睡眠時間は十分にとっているはずが、眠りが浅いために、睡眠の充足感を得られない(眠り足りない)ような状態です。
ご自身に当てはまる症状がある場合、睡眠に何らかの問題を抱えている可能性があります。
4つに分類される不眠症状のうち、一つだけ症状が現れる人もいれば、複数の不眠症状が同時に現れる人もいます。
複数の不眠症状が同時に現れる場合のほうが、より症状が重度の不眠症であると思われます。
また、不眠症の症状は、人によって個人差がかなりあるため、これ以外にも、不眠の自覚症状が薄い場合でも長期的に眠りの質に悩みがある場合や、日中に心身の異常が現れている場合など、不眠症である可能性があります。
不眠症の原因
不眠症の原因は様々なものがありますが、一般的に言われる不眠症の原因には以下のようなものがあります。
- 1.自律神経系の乱れ
- 自律神経系は、交感神経系・副交感神経系の二つで構成されており、日中は交感神経系が、夜間は副交感神経系がそれぞれ優位に働いています。
言い換えると、交感神経系が働いているときは眼が覚めている時、副交感神経系は眠る時にそれぞれ働く神経系であります。
何らかの原因でこのバランスが崩れると、夜間の眠るべき時に交感神経系が興奮して、副交感神経系の働きを抑えてしまい、眠りに就くことが出来なくなります。
逆に、日中の交感神経系が働いて、活発に活動すべき時に吹く交換し軽々が働いて眠くなってしまうこともあります。
こうした自律神経の乱れは、不眠症状のほかにも、原因不明の頭痛や動悸、手のしびれや倦怠感など様々な症状が現れることを特徴とする、『自律神経失調症』という疾病に分類され、現代人の多くの人が罹患しているとされます。 - 2.ストレスや悩み
- 就業・就学上の悩みや不安、近親者を亡くした場合などの精神的なショックなどのストレスにより不眠になることがあります。
現代には多種多様なストレスが蔓延しており、子供から大人まで、誰しもがストレスによって不眠になる危険性と隣合わせにいると言えます。 - 3.お酒やタバコ、コーヒー(カフェイン)など
- タバコに含まれるニコチンやコーヒーやお茶などに含まれるカフェインには覚醒作用があります。
また、一般的にお酒は寝付きを良くするものと考えられていますが、お酒も体内で分解される過程で覚醒効果があります。
その他、一部疾病の治療に用いられる薬品などの副作用によっても不眠になることがあります。 - 4.生活環境
- 室内外の騒音、引っ越しなどによる環境の変化、季節による温度や湿度の変化など、睡眠時の環境により、不眠に陥る事があります。
- 5.身体的な疾病・疾患
- 呼吸器系の疾患や、アトピーなどの皮膚疾患(かゆくて眠れない)、脳神経の障害、身体の痛み、など、様々な身体的な疾患・疾病により、不眠(寝付きが悪くなる、睡眠が浅くなるなど)になることがあります。
また、睡眠時無呼吸症候群など、何らかの睡眠障害が不眠の原因になっている可能性もあります。 - 6.精神的な疾病・疾患(うつ病、統合失調症など)
- うつ病や統合失調症に代表される精神疾患では、メラトニンという睡眠ホルモンを分泌する脳内のセロトニンという物質が不足することにより、多くの場合不眠症を発症すると考えられています。
詳しくは、『不眠症の種類別対策』をご覧下さい。
不眠症対策
不眠症を解消するにはどうすればよいでしょう。
多くの場合、不眠症の対策に必要なのは、決して安易に睡眠導入薬や不眠治療薬に頼るのではなく、なにが不眠症の原因となっているのか、根本の原因をしっかりと把握した上で、個人にとっての適切な対策や治療法が何なのかを探る事から始まります。
また、不眠の原因は自律神経系の乱れを始め、ストレス/生活習慣/食生活、住環境や睡眠前の行動などに、睡眠を妨げる要素がある場合が多いと考えられます。
これらの生活習慣や食生活等に原因のある不眠症に関しては、以下の「快眠のコツ」を参考に、生活習慣を改善するなどすることで、不眠症対策をして頂く事が出来ます。
1.眠る前の刺激を控えて就寝に備える
2.適度な運動をする
3.食事に気をつける
4.就寝前の光の刺激を抑える
5.体温の調整
6.起床時間の計算
7.寝具を考える
8.カフェイン・アルコール
9.音に気をつける
10.長寝しない
詳しくは『快眠のための10のコツ』をご覧下さい。
また、生活リズムの改善など、いくつか不眠症の対策方法があります。
詳しくは『不眠症の種類別対策』をご覧下さい。
うつ病による不眠症とは
不眠症の原因の中で、多くの人が深刻な悩みを抱えていると言われる、うつ病などの精神的な疾病・疾患について詳しく説明していきたいと思います。
うつ病は現代では『心の風邪』といわれるほど、珍しくない病気になりました。
最近の研究報告では、うつ病の有病率は人口の1~5%にも上るという事です。
うつ病になると多くの場合、不眠症に陥ります。
うつ病が不眠症を引き起こす原因は、うつ病の症状の一つであるノルアドレナリンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質の働きの鈍化にあると言われています。
うつ病とセロトニンに密接な関わりがあることは、うつ病の治療薬である抗うつ剤にセロトニンの再吸収を阻害する作用のあるSSRIなどが広く用いられている事などからも明らかです。
詳しくは、『不眠とうつ病の関係』をご覧下さい。
セロトニン不足が不眠症の原因の一つ
うつ病や統合失調症の人が不眠症になる事から、脳内のセロトニンの不足が、不眠症の原因になると考えられています。
通常、人間の睡眠前にはメラトニンと言う睡眠ホルモンが体内に分泌されるようになります。
体内に睡眠ホルモンであるメラトニンが増える事で、だんだんと眠りにつきます。
しかし、実はメラトニンはセロトニンによって、分泌を促されるという特徴を持つホルモンなのです。
従って、セロトニンが不足している人には、睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌する力が少なく、結果として不眠症に陥りやすいのです。
→セロトニンについて詳しくは『セロトニンとは』をご覧ください。