睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)という病気をご存知でしょうか。
睡眠障害(不眠症を始めとした、睡眠に関係した病気・疾病の総称。)の一つとして数えられる、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気のことです。睡眠中に気道が舌根やのどちんこなどで塞がれることで呼吸が止まったり、呼吸しにくくなることで、脳や血管などに負担がかかるなどして心身に様々な症状を及ぼします。

睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に発生する疾病なので、元々自覚することが難しいとされていて、家族などの気付きも重要であると言われています。

睡眠中に激しいイビキをしていたり、呼吸が止まっているようなことがある場合、または、そうした状態を頻繁に繰り返している場合はこの病気である可能性があります。

本人が感じる事のできる自覚症状としては、以下の様なものがあります。

  • 起床時に頭痛がある
  • 頭が重たく感じる
  • 日中の眠気
  • 集中力の低下
  • 記憶力の低下
  • イライラする
  • 抑うつ気分

特に脳に十分な酸素が供給されないために、眠りが浅くなったり、熟睡感が得られず、日中の仕事中や勉学中に眠気を催し集中力が低下の原因になったり、突然、激しい眠気に襲われてこん睡してしまうことが多いと言われています。

近年は時折り、列車や高速バスなどで大事故を起こした運転手が、睡眠時無呼吸症候群だったとされ、ニュースなどでも話題になることがありました。

さらに、放置すると高血圧・糖尿病・脳梗塞をはじめとした『生活習慣病』の原因にもなるとされているばかりか、脳卒中などによる『突然死』などの原因になりえるともとされ、過去には、若くして亡くなったプロレスラーの橋本真也氏の死因の遠因の一つとして、睡眠時無呼吸症候群だったことが影響しているのではないかとも言われています。

発症すると眠りの質が低下して様々な弊害が

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠の質が低下することから、抑うつ症状が現れることもあると言われており、うつ病と診断された人の2割弱は睡眠時無呼吸症候群を合併しているという報告もあり、精神疾患への合併や関連が示唆されています。

また、眠りの質が低下するということは、深い眠り(ノンレム睡眠)が減り、浅い眠り(レム睡眠)が増える、ということも意味します。

人は睡眠中、特に深い眠りの間に『成長ホルモン』が分泌されていますが、深い眠りが減ると、成長ホルモンの分泌も減ってしまう恐れがあり、成長ホルモンが不足すると、疲れが取れない、病気への抵抗力が下がる、脂肪の増加、肌の老化など、体や健康に対して様々な悪影響が生じる可能性があります。

肥満気味の人は発生リスクが3倍!

発症原因としては、もともとは肥満気味の中年男性に多いとされている病気で、肥満体型の人は通常の3倍以上の発症リスクがあるとされています。
また、アゴが小さい人もかかりやすいとされています。

尚、これまでは女性はかかりにくいものと思われがちでしたが、閉経後の女性の場合、発症するリスクが高くなるということがわかってきました。
これは、閉経後に女性ホルモンの分泌が変化することが影響していると考えられていますが、更年期障害と症状が似ていることから、見逃されやすく、重症化することがあると言いますので、女性の方も注意して下さい。

今日から始められる睡眠時無呼吸症候群の対策

誰でもすぐにできる対策としては、以下のようなものがあります。

睡眠時無呼吸症候群の対策
食生活の改善―
肥満が大きな原因になるため、肥満気味の場合は、食生活を改善してダイエットをするなど、肥満の改善をしましょう。
また、睡眠時の低血糖が睡眠時無呼吸症候群の一つの原因であるともされているため、血糖値にも注意しましょう。
飲酒を控える―
アルコールは気道を狭める原因の一つになるため、就寝前の飲酒は控えましょう。
寝る姿勢を変える―
仰向けに寝ることで気道が圧迫されて呼吸がしにくくなるため、横向きやうつ伏せで寝るなど、気道を確保しやすい態勢で眠ることをお試し下さい。
抱きまくらを使用したり、枕などの寝具を変えてみるのも有効です。
口呼吸をやめる―
睡眠時に口で呼吸すると、イビキをかきやすくなります。
また、口の中が乾いたり、気道が狭くなるため、鼻で呼吸するように普段から心がけましょう。
鼻炎持ちで普段から鼻通りが悪く、鼻で呼吸しにくい人は鼻炎の治療も行いましょう。

★口呼吸の悪影響については『鼻呼吸と口呼吸』をご覧ください。

睡眠時無呼吸症候群の検査・診断/治療

代表的な治療は、専門医の指導の下、適切に行うことが効果的です。
減量療法を行う他、呼吸療法、マウスピース療法、外科手術などが適用されます。

病状の検査や診断は、神経内科、耳鼻咽喉科、呼吸器科系など、専門医へ相談して頂く事をお勧め致します。
参考:睡眠医療認定医リスト-日本睡眠学会

★次のページでは『過眠症』をご紹介します。