サルコリピンとは、筋肉に含まれるタンパク質の一種で、体温の調節に作用しており、発熱により体温を作り出しています。サルコリピンによる発熱は、食事などから摂取したエネルギーを熱に変換して体温を上昇させます。
サルコリピンの特徴
サルコリピンは筋肉を鍛えることで増やすことが出来ます。男性よりも筋肉量の少ない女性の場合や運動不足で筋肉量が少ない人の場合、サルコリピンの量も減るため、平熱が低めの低体温になったり、冷え性になりやすくなるほか、病気への抵抗力が下がり、風邪などをひきやすくなります。
通常、体が発熱する必要があるのは、主に風邪を引いて体の免疫細胞が働く必要がある時や気温が低く、寒く感じる時などです。短期的な発熱は筋肉をブルブルと震わせること(寒い時に震えるような)で行われますが、常に体を震わせることは出来ません。そのため日常的に体を震わせなくてもサルコリピンによって発熱する仕組み『非震えによる熱産生』が哺乳類には備わっています。
体が発熱する仕組み
体を震わせず発熱する仕組みは主に「筋肉細胞」と「脂肪細胞」の二つによって行われていると考えられており、筋肉細胞ではサルコリピンが、脂肪細胞の中では褐色脂肪組織(BAT,Brown Adipose Tissue)という細胞組織の働きによって、熱が産生されています。
褐色脂肪組織は「いわゆる太った人に付く脂肪(=白色脂肪組織)」とは異なり、乳幼児期に多く、成長期を経て成人になるに連れ徐々に減っていきます。つまり、この褐色脂肪組織による発熱効果は、加齢とともに失われていく性質があるため、放っておくと人の平均体温は加齢とともに低下していってしまいます。
平熱が下がると病気にかかりやすい
人の体温は、平均体温が1度下がると、基礎代謝が約10%低下して太りやすくなるほか、病気などへの免疫力は約30%も下がると言われており、平均体温の低下は病気への抵抗力や免疫力の低下そのものであると言えます。
一説には、平熱が36度以下になるとガンや生活習慣病に罹る可能性が飛躍的に上がるとも言われています。歳とともにガンなどの重度の疾病が起こりやすくなるのも、一つには加齢による平均体温の低下が原因として考えられます。
年々減っていく褐色脂肪組織に対して、サルコリピンは筋肉鍛えることで増やすことが出来ます。病気への抵抗力を付けるには、筋肉を鍛えてサルコリピンを増やし、体の持つ発熱力を維持することが重要なのです。
サルコリピンが減ると冷え性や低体温の原因にも
特に女性に多い冷え性や低体温の原因も筋肉量の低下による、サルコリピンの減少にあると考えられます。また、冷え性や低体温の原因は、筋肉量の低下以外にも、冷暖房に頼りきった生活をすることで、体が本来持っている体温調節機能が低下することも考えられます。
体温変化と睡眠が疾病に繋がる
自然な状態での人の体温は、1日を通じて変化しており、通常は朝が低く、夜眠る前に高くなります。これは自律神経系の働きと同調した変化ですが、近年では乱れた生活習慣や食生活、ストレスなどにより自律神経が乱れる人が増えています。
自律神経が乱れると、一定のはずの体温変化が不安定になり、朝高くなったり、夜眠る前に低くなったりします。そうなると、寝付きが悪くなったり、眠っている途中に中途覚醒したりしやすくなります。
このような自律神経系の乱れから生じた体温変化の乱れが続けば不眠症やうつ病、自律神経失調症などの原因にもなります。
つまり、体温が低いだけで不眠症や自律神経失調症などの精神疾患を発症するリスクも上がるのです。また、筋肉量やサルコリピンの減少が体温の低下を引き起こす場合があることも併せて覚えておく必要があります。