仕事や人間関係がうまく行かずむしゃくしゃしたり、落ち込んだときのストレス解消法の一つに、スイーツ、つまりお菓子やケーキなどの甘いものを食べるという方法がありますが、本当に有効なストレス解消法なのでしょうか?
甘いものを食べるとストレスが解消される理由
甘いものを食べるとストレスが解消される理由は、甘いものを食べることで脳内で『セロトニン』の分泌が増えるためだと言われています。セロトニンは強い抗ストレス作用を持つ物質で、分泌されることでイライラや不安などのストレスを抑制してくれる働きがあります。
では、甘いものを食べるとセロトニンが分泌されるのはなぜでしょうか?
甘いものを食べると血糖値が急上昇します。血糖値が上がると、血糖値を下げるために『インスリン』の分泌が促進されます。
インスリンには、セロトニンの原材料である『トリプトファン』が脳内との取り込まれるのを促進する作用があるため、甘いものを食べると血中のトリプトファンが脳内へと到達しやすくなるのです。
そして、脳内にトリプトファンが増えるとセロトニンが合成しやすくなり、セロトニンの合成が増えることで不安やイライラと言ったストレスを解消しやすくなる、というわけです。
甘いものでセロトニンが増えるまでの簡単な流れ
- 甘いものを食べる
- 血糖値が上がり、インスリンが分泌される
- 脳内へのトリプトファンの取り込みが促進される
- 脳内でセロトニンの合成が促進される
セロトニンは満腹中枢を刺激する
強い抗ストレス作用を持つセロトニンの合成が促進されれば、イライラや不安などのストレス症状を抑制することができます。これはセロトニンがノルアドレナリンやドーパミンと言った、脳内の他の神経伝達物質がストレスによって過剰に働くのを抑えてくれるためです。
しかし、甘いものを食べたときにストレスが解消されやすいのは、神経伝達物質の働きが抑制されるためだけではありません。
セロトニンは脳の『満腹中枢』を刺激する働きをしており、甘いものを食べてセロトニンが合成されると、その刺激が満腹中枢にも伝わります。
ご飯を食べると誰でも幸せな気分になるように、脳は満腹感を得ると多幸感や満足感を得るため、その多幸感により、事前の不快なストレスを相対的に薄れさせたり、忘れさせてくれる働きもあるのです。
嫌なことがあったら甘いものを食べればいい?
では本題です。嫌なことがあったら甘いものを食べればいいのでしょうか?
確かに、甘いものを食べればストレスが解消できるのであれば、ストレスを感じたら甘いものを食べさえすればいい、と言えなくもないのですが、これはストレスの解消法としては下策ではないかと思います。
なぜなら、甘いものを食べることでのストレス解消を続けているうちに、当初の「ストレスを解消するために甘いものを食べる」というストレス解消の手段は、やがて「嫌なことがあったから甘いものが食べたい」という欲求へと変わってしまいます。
すると、「ストレスが無くても甘いものを食べたい」、そして「甘いものが食べられないとストレスを感じる」、いわゆる「手段の目的化」が起こり、甘いものへの依存状態を作り出してしまうこともあるのです。
食事への過度の依存は、やがて拒食症や過食症と言った精神疾患へもつながりかねません。
さらに、何らかの偏った手段にストレス解消を頼れば、それはやがてドーパミンの暴走を招き、スイーツ依存、ニコチン依存、アルコール依存、パチンコ依存、ギャンブル依存、恋愛依存というような、依存症にも陥るリスクがあるということもを知っておくべきでしょう。
photo credit: Melodie RGB plaisirs gourmands de l’enfance (license)