毎年秋から冬にかけて、何となく気分が落ち込むことがあります。冬が何となく苦手、という人も多いのではないでしょうか。冬に気分が落ち込んだり、憂うつな気分になるのは、脳内のセロトニンが関係しています。

冬はセロトニンが減少しやすい

セロトニンは脳内で働く神経伝達物質で、不安やイライラなどを抑えたり、ストレスを和らげて、心の安定を保つ作用を持っています。実はいくつかの理由から、冬になるとセロトニンの分泌が減少しやすいのです。

日照時間が減る

日本では夏場に最も日照時間が長く、冬場の冬至付近が一年のうちで最も日照時間が短くなります。日照時間とセロトニンの増減には密接な関係があります。

脳内にはセロトニン神経というセロトニンを生合成する部位がありますが、セロトニン神経がセロトニンを活発に生合成する条件のひとつが、太陽光の刺激です。

網膜から太陽光の刺激が脳に届くことで、セロトニン神経が活性化し、セロトニンの分泌を促進します。しかし、日照時間が短くなる冬場は、太陽光の刺激が夏場に比べて少なくなりやすいため、その分セロトニン神経の働きが鈍くなりやすく、セロトニンの生合成も減少してしまうのです。

活動量が落ちる

寒い冬場は、外に出て運動するのも億劫になり、どうしても他の季節に比べると、運動する機会が減少してしまうため、一日の活動量そのものが落ちやすくなります。

セロトニンは、呼吸や脈拍、目の瞬き、姿勢の維持、腸の活動など、日頃は無意識のうちに行っている、不随意運動を支えています。なかでも、呼吸や脈拍のように一定のリズムで繰り返す運動は、脳のセロトニン神経を活性化させる運動だということがわかっています。

普段何気なく行っている運動の中にも様々なリズム運動があり、こうした運動をすることがセロトニン神経を活性化するのに役立っているのですが、活動量が落ちる冬は、リズム運動を行う機会が減ってしまい、その分セロトニン神経が弱りやすいのです。

自律神経系が乱れやすい

室内外の寒暖差が激しい冬の時期。特に現代では、室内ではエアコンが効いていて、冬場でも暖かく、外に出ると一気に真冬の気温になるため、気温が乱高下し、それに合わせて自律神経系が体調の調節を行うためにフル活動します。こうした激しい気温変化の中で過ごすと、それに合わせて体調を調節する自律神経系がだんだんと弱っていきます。

自律神経系は、セロトニンの働きに大きな影響を持つ神経系であるため、自律神経系が乱れるとセロトニンも正常に分泌されなくなり、気分が落ち込む、頭痛が起こる、耳鳴りがする、イライラ、憂うつなど、様々な症状が起こる原因となります。

こうした自律神経系の乱れで起こる症状の総称を『自律神経失調症』と呼びます。

冬場のセロトニン減少を防ぐには

心の安定を保つ働きを担っているセロトニンが減少すると、気分が落ち込んだり、外出や人と会うのが億劫になる、何となく引きこもりがちになりやすくなります。

冬場に起こりやすいセロトニンの減少を防ぐにはいくつかの方法があります。

室内で日光浴

外に出るのが億劫な冬は、無理に外で日光浴せずにカーテンを開けて、室内で日光浴をしましょう。太陽光の中でも、朝の光はセロトニン神経を特に強く刺激するため、朝起きるときにカーテンを開けておいて、15分から30分ほど日光浴をするのがお勧めです。

朝日を浴びると、体内時計も整いやすく、乱れがちな生活リズムを整える効果も期待できます。

冬はとにかくカーテンを開けましょう。

日光浴でセロトニンが増える理由

豆乳鍋

セロトニンの減少を防ぐには、セロトニンの原料をしっかりと補給することも重要です。セロトニンの原料となるのは、肉や魚、豆類などに含まれているトリプトファンです。最近流行りの豆乳鍋なら、豆乳と豆腐が同時に摂取出来るので、トリプトファンがたっぷり補給できます。

豆乳鍋以外にも、肉、魚、納豆、卵、乳製品など、トリプトファンが含まれている製品はたくさんありますので、好きな食材でレシピを考えてみるのも良いでしょう。

トリプトファンを多く含む食品とレシピ

食べ物をよく噛む

咀嚼はセロトニン神経を活性化させる方法の一つです。ものをじっくりゆっくりとよく噛むことは、一年を通じてセロトニンを増やすために有効です。特にセロトニン神経が弱りやすい冬場は、できるだけ時間をかけてゆっくりと食べ物をかんでセロトニン神経を活性化させましょう。

ものを噛んでセロトニンを増やす方法

室内で運動

実は、セロトニン神経を活性化させる運動と言うのは、必ずしも激しい運動である必要はありません。ウオーキングや腹式呼吸のような、強度の極小さな運動でもセロトニン神経は活性化されます。そのため、無理に寒い外で運動しなくても、室内で軽い運動をすればセロトニンを増やすことはできます。

例えば、退屈かもしれませんが「その場足踏み」、「スクワット」、「踏み台昇降運動」などはスペースが無くても出来る運動です。お年寄りならお手玉でもセロトニン神経の活性化に役立ちます。

リズム運動でセロトニンを増やす方法

室内で出来る最も手軽で有効な運動は、『腹式呼吸』かもしれません。腹式呼吸はストレスの解消にもなり、老若男女誰でも出来ます。

色々なことが面倒になりがちな冬ですが、気分の落ち込みを放っておくと、やがてそれが慢性化してうつ病などを発症することもありますので、少しずつセロトニンを増やすことを実践していきましょう。

photo credit: mf.flaherty All the leaves are gone and the sky is gray on such a winter’s day (license)