2015年4月1日より施行される食品表示法によって、国に届出をすることで食品の機能性(「睡眠をサポート」や「健康に役立つ」など)を表示することが可能になります。
これまで一部の食品や栄養素を除いて、こうした機能性を表示することは法律で規制されてきたため、今回の法施行により健康食品ビジネスがより盛況になることが予想される一方、私たち消費者にとっても、安全な商品の選択に食品の栄養成分表示や機能性の表示が役立つことが考えられます。

これまでの食品の機能性表示

これまで日本では、食品の機能表示を行うことが出来たのは、栄養機能食品(12種類のビタミンと5種類のミネラル)と特定保健用食品(いわゆるトクホ。法律で特定の効果が期待されることを表示することが許可や承認された一部の食品)のみで、これら以外の食品が、機能性(○○に効く、○○が改善できる、など)を表示することは、食品衛生法、日本農林規格(JAS)法、健康増進法、景品表示法などの法律によって規制されてきました。

平成24年に発足した第二次安倍内閣による規制改革実施計画(平成25年6月14日閣議決定)により、こうした食品表示の規制を緩和することで経済成長を促進させようとする動きが強まり、消費者庁・厚生労働省・農林水産省などによる検討会などが開かれるなどした結果、平成27年4月1日より食品衛生法、日本農林規格(JAS)法、健康増進法の3法を食品表示法に統合して施行されます。

この食品表示法には、栄養成分表示の義務化や機能性食品制度も含まれており、規定に違反すると罰則を課せられます。

機能性食品制度とは

機能性食品制度はアメリカの「ダイエタリーサプリメントの表示制度(DS制度)」を参考にしており、栄養素などが持つ効果をより柔軟に表示できるようにする制度です。
DS制度では、食品を販売する事業者は監督官庁であるFDAへ届出をすることで、事業者の自己責任によって機能性の表示が可能です。

しかし、参考にしたDS制度にも問題点はありました。
DS制度では、有効性に関する表示内容の根拠が届出や開示の対象ではなく、監督官庁であるFDAが根拠の開示を要求しても拒否できるため、有効性の根拠が曖昧でも販売することが出来てしまえる制度だったのです。

食品表示法における機能性食品制度では、DS制度の問題点を踏まえ、食品の安全性の確保と機能性表示を行う上での科学的根拠を確保するために、事業者による安全性や有効性の臨床実験を特定保健用食品の試験方法に準じる形で行い、機能の根拠を十分に実証した上で、国への届出が義務付けられました。

機能性食品制度の特徴

  • 事業者が消費者庁に表示内容などを届出をして60日後から販売が可能
  • 成分名を表示し、体に良いことを謳える。
  • 「目」「脳」「おなか」など、部位を表示できる。
  • 「疲労」「ストレス」「睡眠」「アレルギー」などの特定機能の効果を表記できる
  • 病気の予防や治癒などの医学的表現はできない
  • 違反には罰則規定がある

食品の機能性の表示例

使用可能な表現
1.本品はβ-クリプトキサンチンを含み、骨の健康を保つ食品です。更年期以降の女性の方に適しています。
2.本品はメチル化カテキンを含んでいるため、花粉が気になる方の目や鼻の調子を整えます。
使用できない表現
1.花粉症に効果あり、高血圧の人向け、など
―病気の予防や治療に効果があるような表現は使用不可
2.消費者庁承認、厚生省公認、など
―省庁が承認や許可をするわけではない
3.増毛、美白、肉体改造、など
―健康の維持や増進の範囲表現を超過しているため

参考:食品の新たな機能性表示制度に関する検討会 – 消費者庁


2015年4月から始まる機能性表示制度によって、早ければ6月中より店頭には機能性を表示した食品や健康食品が並ぶことになります。

この新しい制度がスタートすることで予想されるのが、度を越した機能性の表現や、それによる消費者の誤認、また、臨床実験が不十分なことから起こる健康被害などです。

この機能性表示については、事前に消費者庁に届出を行い、表現に関するNGワードの有無などを調べる、形式的な審査は行われるものの、その商品の機能性の根拠となる論文などまでは細かく審査されない、いわば形式的な審査になるだろうと言われています。

事業者からすれば審査通過までの時間が大幅に短縮されるメリットがあるものの、消費者側からすると十分に審査されていない商品が販売されれば、効果の誤認などを起こしやすくなることが予想されます。

特にインターネットでは、これまでもサプリメント等が法律で許された表現ギリギリ、または表現出来る範囲を逸脱している商品などが販売されており、こうした現状が取り締まられない限り、より過激な表現でサプリメント等が販売される可能性があります。

photo credit :Ibrahim Asad’s PHotography