「食べてすぐ寝ると牛になる」ということわざは、根拠の無いオカルトとまでは行かないものの、食べてすぐ横になると行儀が悪いから、という理由から生まれた戒めであり、しつけのための方便であり、多くの人が誤解している言葉の一つではないでしょうか。
こうして、私たちは小さい頃から親にしつけられてきました。
その他にも「寝る前にご飯を食べると太る」とか「夜食は太りやすい」という秘密の呪文を聞いたことがあるでしょうか。
果たして、本当に夜食べると太るのでしょうか?
実はこれも子供をしつけるためのオカルトなんじゃないか?
そう思って調べてみました。
※以下は当記事執筆時の情報です。
こうした健康に関する情報は常に新説や新事実が出て、旧常識が覆ることがありますのでご了承下さい。
夜食べると本当に太る
「夜食べると太る」というのは本当でした。
(正確には、夜食べると朝や昼よりは太りやすいと言う考え。)
これには、人の生活習慣と、BMAL1(ビーマルワン)というタンパク質とインスリンとったホルモンが主に関係しているというのです。
- 生活習慣
- 朝起きて夜眠るという一般的な生活習慣の場合、活動量の多い昼間はその分体の基礎代謝量が多く、夜になり活動レベルが下がるに連れて、基礎代謝量も下がってきます。
これは、人の自律神経の働きとも一致しており、交感神経系が優位な日中は多くのエネルギーが消費され、副交感神経系が優位になる夜間は、昼間よりも消費エネルギーが減ります。 - BMAL1
- BMAL1は人の自律神経や体内時計と連動していて、脂肪細胞を作る酵素を増やす働きを持っています。
BMAL1は、働いたり勉強したり活動の多い日中は量が少なく、体を休めたり眠ったりする夜間に多く生成されます。
BMAL1が多い夜間に食事をすると、そのエネルギーを脂肪として蓄えようとするため、脂肪細胞が増えたり大きくなりやすく、その結果太るという仕組みです。 - インスリン
- インスリンは膵臓から分泌されるペプチドホルモンの一種で、血糖を一定に保つ作用と、脂肪の形成や、脂肪細胞へのエネルギーを送り込む作用などがあります。
糖尿病の治療に用いられることで有名です。
食事をすると血糖値が上がり、インスリンが分泌されます。
インスリンは体中の細胞へ糖を運び、その残りは脂肪細胞に送り込まれ、それが溜まると太ります。
インスリンも自律神経と連動し、活動レベルが高く体がエネルギーを多く必要とする昼間に多く、活動レベルが下がって休息へ向かう夜間は分泌が減りますが、夜食事を取るとインスリンが急激に分泌されて、その結果脂肪が蓄積して太ってしまいます。 - オレキシン
- オレキシンは筋肉で効率的にカロリーを消費させる作用のあるホルモンです。
オレキシンは夜間は分泌が減るので、夜間に食事をすると筋肉でのカロリー消費効率が日中よりも悪く、カロリーが余って脂肪として蓄えられやすくなります。
一日のうち、夜間は休息に向かうために活動レベルが落ちて、体が消費するエネルギー量が減ります。
そこに脂肪を作るBMAL1とインスリンの分泌というコンボよって、夜遅い時間の食事は最高に太りやすいということになります。
夜食べて太らないために
とは言え、忙しい現代人の我々は『遅寝早起き』。
夜遅くまで仕事や勉強をしていることが多いため、夕食の時間も遅くなりがちです。
忙しい生活を送りながら太らないために具体的にどう注意すればよいでしょうか?
- ■夜9時ごろまでには食事を終える
- 一般的な生活習慣の場合、BMAL1は夜間22時ごろから急激に増えだすので、夕食はできるだけ早めに済ませましょう。
尚、就寝時間は人によって違うので、目安としては就寝時間の3時間前ぐらいまでに夕食を済ませるのが良いようです。 - ■夜の食事の量を少なくする
- 夜は脂肪になりやすいので食事の量を減らし、献立も揚げ物や脂身など脂肪分は控え、タンパク質や野菜を中心としたヘルシーメニューにしましょう。
その分、昼にきちんと食べましょう。 - ■急激なインスリンの分泌を避ける
- 昼食から夕食までは時間が長く開きやすく、長時間の空腹後に食事をとると血糖値の変動が激しくなり、インスリンの分泌が増えて脂肪がつきやすくなります。
どうしても食事が夜遅くになってしまう時などには、昼と夜の間に間食を取るとインスリンの急激な分泌を防ぐことができます。
ただし、間食を食べ過ぎては意味がないので、栄養があり、腹持ちが良いものにしましょう。
眠る前に食事を控えて胃を休めればダイエットに効果的
眠る前に食事を取ると、胃が消化活動のために活発化して、眠りの質を下げてしまいます。
睡眠の質が下がれば、メラトニンや成長ホルモンと言ったホルモンの分泌も悪くなる可能性があります。
実は、成長ホルモンはダイエットにはとても重要で、「寝る子は育つ」などと言われますが、成長ホルモンは寝ている間に特に多く分泌され、しかも脂肪の分解作用などがあり、良質な睡眠をとることが、効果的なダイエットの秘訣だったりもします。
さらに、成長ホルモンには、アンチエイジング効果や、美肌効果など、女性の美容とは切っても切れない関係がありますので、良質な睡眠をとるためにも眠る直前の食事は控えましょう。
筆者は深夜のラーメンが大好きでしたが、ここ数年で太り始めたので、控えたところ体重がさらに5Kg増えました。
(※実際は、それ以外の食事量が増えた模様)
世の中そんなに甘くは無いらしいです。
夕食が早すぎると太りやすくなる!
ここまで紹介した話だけだと、「夜遅くに食べるのは良くないから、できるだけ早い時間に食べよう」ということになりそうですが、夕食は早すぎても良くないようです。
参考:「絶食と飢餓状態」
人は寝ている間もエネルギーを消費していますが、その活動を支えるのが肝臓に蓄えられたグリコーゲンです。
食事で栄養を得ると、肝臓などがグリコーゲンにブドウ糖(またはグルコース)を貯蔵します。
食後の時間経過とともに、血液中のブドウ糖(グルコース)は減少し、血糖値は下がります。
すると、血糖値を一定に保つために、貯蔵したグリコーゲンは分解されてグルコースとなり、血液中に放出されます。
このグリコーゲンは燃費が良く、エネルギー源として利用されやすいのですが、貯蔵量が少なく、空腹状態が長く続くとすぐに燃料切れを起こしてしまうのです。
貯蔵されていたグリコーゲンが切れそうになると、糖新生という現象が始まり、体のエネルギー源として脂肪や筋肉が利用されるようになります。
脂肪が利用されると聞くと、なんだかダイエットには良さそうですが、脂肪の分解の次に筋肉の分解が始まります。
筋肉が分解されるとどうなるか?
筋肉は燃費の悪い組織で、維持するには多くのエネルギーを必要とします。 つまり、筋肉が分解されて減ると、体を維持するために必要なエネルギー量=基礎代謝量が減って、痩せにくくなり、太りやすくもなります。
グリコーゲンの貯蔵量には諸説あり、また個人差や男女差もありますが、最大で13時間程度と言われていて、食後約13時間経つと、筋肉の分解が始まり、こうした生活習慣を続けると、太りやすい体質になってしまうというわけです。
人の体は一度に大量に食事を食べると、その栄養を脂肪にして溜め込もうとしますし、食事の間隔が長過ぎると、上述の通り筋肉が分解されて減少してしまうこともあります。
こうした現象を防ぐには、1日の食事回数を5,6回、少ない量をこまめな食事で取るのが良いとされています。
昼間はいくら食べても太らないのか?
ここまで「夜食べると太る」と繰り返し呪文を唱えてきたので、「昼間ならいくら食べても大丈夫」と思ってしまう人もいるかもしれません。
しかし残念ながら、昼間だろうが食べたら太ります。
様々なダイエット法が語られる昨今、「楽して痩せられる方法があるんじゃないか」とか「何か抜け道ががが」とか、難しく考えがちですが、体重の増減の原則は、とてもシンプルです。
「消費カロリーが摂取カロリーより多ければ体重が減る」
「摂取カロリーが消費カロリーより多ければ体重が増える」
つまり、早い話が、「何時に食べようが、食べ過ぎたら太る」ということです。
生活環境や遺伝など、個人差はあるものの、およそほとんどの人がこの原則に当てはまります。
この普遍的な大原則のもと、食生活の見直しと、軽い運動習慣を心がけることがダイエットにも健康にも一番です。