現代の日本では、多くの人が眠りに対して何らかの悩みを持っており、『5人に1人が睡眠に関する問題を抱えている』とまで言われています。では、実際に睡眠不足になるとどういっ症状が出るのかをご紹介します。尚、ここでご紹介するのは、「たった一晩の睡眠不足でも起こりえる症状や悪影響」などです。
目次
睡眠不足の定義
そもそも、睡眠不足とは具体的にどういった状態の事を指すのでしょうか?
睡眠不足とは、言葉の意味としては、「十分に眠っていない」「睡眠が足りていない」ということですが、人の睡眠にはかなり個性や個人差があるため、睡眠時間の長短だけでは表すことが出来ません。
詳しくは『睡眠の個人差』
▼自覚症状の有無
睡眠時間の長短にかかわらず、これから紹介するような症状や影響(集中力の低下、など)が自覚症状として現れていれば、睡眠不足であるといえるでしょう。
▼睡眠満足度が低い
また、漠然とした自覚であっても、睡眠に十分な満足度を得られていない、何らかの不満があると感じる場合は、睡眠不足である可能性が考えられます。
特に、『長時間眠っているのに睡眠の満足度が低い』と感じる人は、『睡眠の質』に問題を抱えている場合がありますし、俗に言う『かくれ不眠』や何らかの睡眠障害である可能性もあります。
睡眠不足で起こる症状
以下に紹介するのが、睡眠不足によって心身に起こる症状や悪影響の例です。
- 1.ストレスが解消出来ない
- 「嫌なことも寝たら忘れた」ということがよくあります。実際、人は眠ることでストレスを解消していると考えられていて、睡眠それ自体が非常に効果的なストレスの解消法なのです。
- ストレスが溜まると、人体に非常に深刻な影響が生じます。睡眠不足でストレスを解消することが出来ずに溜まっていくと、下痢や便秘の症状が起こりやすくなったり、心拍数や血圧が上がって高血圧気味になったり疲れを感じやすくなったりします。また、睡眠不足が慢性化すれば、やがて不眠症やうつ病などを発症する可能性が高くなります。
- 2.老化の進行
- 睡眠不足になると、成長ホルモンの分泌が減り、皮膚や筋肉など体組織の修復力が衰えてしまいます。また、睡眠不足になると、ストレスが溜まりやすくなり、細胞を傷つける活性酸素が体内に発生しやすくなってしまうため、老化が進んで老けた顔になりやすくなります。具体的には、肌のシワが増えたり、目の下のクマや、表情筋が衰えて、顔がたるんで見えるなどの変化が現れやすくなります。
参考:顔の暗さや老け顔はセロトニン不足が原因の場合も - 3.太りやすくなる
- 睡眠が不足すると、食欲を増進させて『肥満ホルモン』として知られるグレリンという物質の分泌が増えることが分かっているため、睡眠が不足すると太りやすくなる可能性があります。
- 4.疲れが取れない
- 人は、深い眠りである「ノンレム睡眠時に脳」を、浅い眠りである「レム睡眠時に肉体」を、それぞれ休息させて、疲れをとっていると言われています。睡眠不足になると、脳と身体の疲れを十分にとることが出来ず、目覚めてからも脳が疲労感や倦怠感を感じやすくなったり、筋肉の疲労が回復せず、身体に疲労物質FFが溜まってしまい、身体が重たく感じたりしやすくなります。
- 5.集中力と判断力の低下
- 睡眠不足で、特に多くの人が実感するのが集中力の低下ではないでしょうか。睡眠不足が起こると、起床後も交感神経系が十分に活性化せず、頭がボーっとして集中力や判断力が低下といった症状を引き起こしてしまいます。この集中力や判断力の低下は、勉学、仕事、運動、育児、恋愛など、社会生活上のあらゆる面で、多くの悪影響を及ぼす可能性があります。
- 6.感情のコントロールが難しくなる
- 睡眠不足の状態は、ストレス耐性が下がって、ストレスホルモンであるコルチゾール、ノルアドレナリン、アドレナリンなどが分泌されやすくなります。ストレスホルモンはイライラや不安な気持ちを感じやすくし、また判断力も低下するため、感情のコントロールが難しくなり、すぐにイライラしたり怒りっぽくなったり、落ち込んだりしやすくなります。
- 7.コニュニケーション能力の低下
- 睡眠不足の状態は、物事の観察力や洞察力、共感性などに作用するオキシトシンやフェニルエチルアミンなどのホルモンの働きを阻害します。そうすると、相手の声や口調、表情などから、相手が考えている事を読み取りにくくなるので、人とコミュニケーションを取るのが普段よりも難しいと感じることがあります。
- 8.パニックを起こしやすくなる
- 睡眠不足は、脳の神経が不安や恐怖といったストレスに対して過敏になりやすく、普段はなんともない、ちょっとしたストレスを感じただけでも、過度の不安や恐怖が増幅され、いわゆるパニック障害を起こしやすいとされています。
- 9.肌のシワや怪我が治りにくい
- 睡眠時に分泌される成長ホルモンには、皮膚や骨、筋肉といった体組織を修復・再生する作用があり、成長ホルモンが集中的に分泌される時間帯は『睡眠のゴールデンタイム』と呼ばれ、美容や子供の成長にとって特に重要な時間でもあります。睡眠不足になると、成長ホルモンの分泌量も減り、古くなった肌のターンオーバーの周期が遅れて、肌トラブルが起きたり、ちょっとした怪我が治りにくくなる可能性があります。
- 10.成績や学習能力の低下
- 睡眠不足では、集中力が低下してしまいます。集中力が低下すると、授業の内容は頭に入らず、学習効果が下がります。また、人の脳は睡眠中に、記憶の整理を行っていると考えられているため、学習した事を長期記憶として定着させるには、適度の睡眠が欠かせません。睡眠を取らないと記憶の整理が出来ないため、受験やテスト勉強などを徹夜で一夜漬けをしても効果が少ないと言われています。
- 11.ミスや事故を起こしやすくなる
- 睡眠不足による疲労の蓄積、集中力や判断力の低下などの症状は、車の運転や機械の操作にも悪影響を与えます。
※実際、法律では睡眠不足や疲労を感じたときには運転をしてはならないことになっています。 - 単純なミスや、ヒヤリ・ハットを起こしやすくなり、また重大な事故を起こす可能性も増えてしまいます。ニュースになるような重大事故の中にも、睡眠不足や睡眠障害の影響があったとされることがしばしばあります。
- 12.腸内環境が悪化する
- 近頃、腸や腸内に住む腸内細菌の働きが、ガンや生活習慣病などの疾病、うつ病などの精神疾患など、様々な病気に関わっているなど、腸内環境の重要性が少しずつ明らかになってきましたが、睡眠不足が続くと、自律神経系の働きが乱れて、胃や腸の働きも弱くなってしまいます。
- 胃や腸の働きが弱まると、消化不良を起こして便秘や下痢を起こしやすくなるなど、腸内環境が悪化する原因となります。睡眠と腸内環境の関係について、より詳しくは、『睡眠と腸内細菌』をご覧下さい。
子供の睡眠不足が増えている
近年、夜更かしで睡眠不足の子供が増加しています。これは小中学生に限らず、就業前の幼児でさえも睡眠時間が減少しているそうです。
本来、子供にとっての睡眠は心と体を成長させるための非常に貴重な時間です。睡眠時間が短く、慢性的な睡眠不足の子供には、肥満傾向、知能や身体の発育に悪影響が出たり、落ち着きがなく、すぐキレて起こったり、情緒不安定になる可能性があります。
詳しくは、『睡眠不足の子供に起こる悪影響』をご覧ください。
睡眠不足が慢性化すると
このページの中でご紹介したてきたのは、比較的短期間の睡眠不足でも起こりやすい症状や悪影響です。
通常は短期的な睡眠不足の場合は、人の恒常性維持機構(ホメオスタシス)の働きにより、その後に十分な睡眠をとることで帳尻合わせが行われて解消されるため、長期的には大きな健康上の影響は出にくいとされています。
しかし、睡眠不足や不規則な生活が習慣化・慢性化すると、不眠症を始めとした睡眠障害や、うつ病や自律神経失調症、生活習慣病と言った身体・精神疾病を引き起こす可能性があるなど、脳や身体に深刻な悪影響が出る可能性があります。
→詳しくは『不眠症の影響』をご覧ください。
また、近年は無自覚のうちに慢性的な睡眠不足である『睡眠不足症候群』という症状が現れる人も増えています。日中に耐え難い眠気が襲ってきたり、集中力がなくボーっとしてしまう人は、睡眠不足症候群に陥っている可能性もあります。
習慣的な睡眠不足や不眠症に陥らないためにも、『快眠のコツ』を実践しましょう。
仕事が忙しいなどの理由で、どうしても睡眠不足になりがちな人は、昼寝をすることで、ある程度は睡眠不足を補うことも可能です。
今回ご紹介した睡眠不足で現れる症状や身体への悪影響は、裏を返せば、十分な睡眠を取れば得ることが出来る効果でもありますので、生活習慣を整え、しっかりと睡眠を摂るように心がけましょう。
参考:『睡眠の効果と必要性』
若年期の睡眠不足が認知症リスクを高める
ベイラー大学の研究によると、若年または中年期の睡眠の品質が良いほど、加齢による脳の認知機能の低下を防ぐことができる可能性が高いと言います。
裏返せば、若い時に睡眠不足の生活を送ると、加齢により脳の機能が衰えやすくなり、認知症などのリスクが高くなるということが示唆されています。
参考:Sleep, Cognition, and Normal Aging Integrating a Half Century of Multidisciplinary Research
睡眠不足を改善するには朝の目覚めから
睡眠不足は、その日一日の行動に様々な悪影響を与える厄介な敵です。ところが、睡眠不足が続いていても、夜になると目が冴えてしまい、なかなか寝付けないため、次の日も、また次の日も睡眠不足が続いてしまうという、悪循環に陥る事があります。
実は、こうした悪循環が起きる原因の一つは、『朝の目覚め方』にあります。
人は元来、朝目覚める時に『太陽光』を浴びて目覚めてきました。実は、太陽光は睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されるためのスイッチなのです。
メラトニンは、『朝日を浴びてから14~16時間後に分泌が最大になる』という性質があり、朝日を浴びることで、夜になると自然と眠りに就くことが出来るのです。
睡眠に何らかの原因を持っている人の多くは、生活習慣が乱れていることが多く、そうした乱れた生活習慣の中では、朝起きて太陽光を浴びる機会も少なくなってしまっているのです。
このように『朝の目覚め方』に問題が生じると、夜の睡眠の質も悪くなり、それが次の日の睡眠不足に繋がり…。こうして悪循環の鎖で縛られることになるのです。
朝の目覚め方を変えること、つまり『目覚めに朝日を浴びる』ことがこうした睡眠不足の悪循環を断ち切るカギでもあったのです。
朝日を浴びて睡眠不足を解消
朝日を浴びることで、睡眠の質を改善し、睡眠不足の悪循環を断ち切ることが出来る可能性が大いにあります。
ところが、忙しい現代人はゆっくり朝日を浴びることなんて出来ません。部屋に窓が無い、夜勤だから朝日を浴びれない、宇宙船の中で生活している、など何らかの理由でどうしても朝日を浴びることが出来ない人には、光目覚まし時計がおすすめです。
光目覚まし時計というのは、通常のアラームや音楽などの『音』が鳴る目覚まし時計ではなく、時間になると『光』を発する目覚まし時計のことです。
詳しくは『光目覚まし時計』をご覧ください。