子供が幼児期を迎えて保育園などに通うようになると、大人と同じような「朝起きて夜眠る」生活リズムに近づきます。ところが、子供と大人では必要な睡眠時間が異なっており、大人に合わせて夜更かしの生活をすると、子供は睡眠不足になってしまいます。

睡眠不足の子供には、肥満傾向、知能の発達の遅れ、運動神経の発達の遅れ、体の成長の遅れなど、様々な悪影響が生じる可能性があります。

子供に必要な睡眠時間の目安

幼児期の子供にとって必要な睡眠時間の目安は以下のとおりです。
1~3歳:12~14時間(昼寝を含む)
4~6歳:10~13時間(昼寝を含む)

より詳しくは、『年齢・年代別の必要睡眠時間』をご覧ください。

子供の睡眠不足で起こる悪影響

  • 肥満傾向
  • 知能の発達が遅れる
  • 集中力や記憶力の低下
  • 運動神経の発達が遅れる
  • 性的成熟が早まる
  • 体の成長が遅れる
  • 免疫力が下がる
  • アレルギーになりやすい
  • 情緒が不安定になりやすい

こうした睡眠不足で起こる悪影響には、主に成長ホルモンとメラトニン、そして自律神経が関わっています。睡眠不足は成長ホルモンメラトニンの分泌を妨げ、自律神経の働きも乱します。

成長ホルモンの働き

成長ホルモンは夜眠っている時に多く分泌されるため、睡眠が不足することでで分泌量が減ってしまいます。 成長ホルモンには、脂肪を分解する作用があり、分泌量が減ることで脂肪を体内に溜め込みやすくなり、その結果肥満につながります。

また、成長ホルモンは身体の骨や皮膚、筋肉などの組織の成長を促進させます。そのため、成長ホルモンの分泌が減ると、知能の発達、運動神経の発達、身体の成長などが他の子供よりも遅れてしまう可能性もあります。

より詳しくは『睡眠と成長ホルモン』をご覧ください。

自律神経の働き

自律神経を司る交感神経系副交感神経系は起きているときは交感神経系、眠っているときは副交感神経系がそれぞれ優位に働きます。

睡眠不足だと交感神経が働く時間が長くなることから、血圧や脈拍が高くなりやすく、インシュリンの働きが弱くなって、血糖値が上がりやすくなり、そのことが肥満につながります。

また、交感神経が興奮するとノルアドレナリンが分泌されるため、すぐにイライラしたり、急にキレて怒り出したりと情緒不安定になりやすくなります。

子供が睡眠不足になってしまう原因

子供が睡眠不足になる原因の一つとして、親の就労環境による影響が考えられます。

例えば、母親がフルタイムで働いている場合、子供の睡眠時間が少なくなる傾向があると言われています。フルタイムの場合、朝は7時頃までには子供を起こして仕事に出かけ、夜は5時頃まで仕事です。そうなると、子供のご飯は夜19時頃、お風呂に入れたりすると21時を回ってしまいます。

21時に子供が寝付いてくれても、翌朝7時頃に起きるとすると睡眠時間は10時間で、1~3歳では睡眠不足、4~6歳でも必要な睡眠時間の目安ギリギリです。保育園などでの昼寝の時間を足して、ようやく帳尻が取れる睡眠量です。

時間に多少ゆとりがあるパートタイムや専業主婦などの場合は、食事や起床時間の調整がしやすく、子供の睡眠時間の確保もしやすくなります。

しかし、現代社会では、年々大人も子供の睡眠時間も短くなっています。特に子供の睡眠時間が短くなる原因は、夜更かしによるもので、生活を共にする親や兄弟の影響が非常に大きいとされています。

スマホやPC、テレビなどの電子機器が進歩して便利になるに連れて、そうした機器を夜遅くまで使ってしまい、眠るのが遅くなってしまうのです。

この記事で紹介したように、幼児や児童にとっての睡眠は、心や身体が健やかに育つために必要不可欠なものですので、出来る限りの睡眠時間を確保することが子供の将来に好影響を与えると考えています。

日本人の5人に1人が睡眠不足

日本人の睡眠に関する統計データ』によると、日本国内の働き盛りの40代の5人に1人は睡眠に何らかの不満を持っている事がわかります。睡眠は、大人・子供にかかわらず、人間が生きていく上で必要不可欠なものです。
(しかしながら、なぜ睡眠が必要かは完全には解明されていない。)

大人にも子供にも、睡眠不足によって様々な悪影響が生じ、そのことが生活全体にまで大きな影響を及ぼしています。

子供の生活様式も以前と変わり、昔と比べると学校が終われば習い事や塾に行く子供が増えて、家に帰る時間はただでさえ遅くなっています。さらに、携帯端末ゲームやスマートフォンなどでどこでも遊べるようになりましたが、ついついベッドの中で夜遅くまで遊んでしまうと、電子機器から発せられるブルーライトには、強力な覚醒作用があり、寝付きが悪くなって睡眠不足を悪化させてしまうのです。

photo credit :Leo Grubler